「04 typeA 2つの道でも思いは1つ」の後

部屋にはペラリペラリとページを捲る音だけが聞こえる。
トールギスの執務室に居る2人は、黙々と本と睨み合っていた。
もちろん、トールギスはあの樹に関する物を読みあさっている。
一方、シュウトは文字が読めなくても、写真にかなり近い絵で、本を呼んでいた。
そして、突然立ち上がった、シュウトはトールギスに言う。
「ねぇ、トールギス!台所、貸して?」
「台所?何故、そんな所に用事がある?」
シュウトはその返答に溜め息を付く。
台所でやる事など、1つだろうに。
「料理!料理したいの!」
「わかった……」
ここで駄目だと言っても、返ってくる返事は「料理がしたい!」だろう。
仕方なく、トールギスは諦めた様だった。

台所へ案内され、手を洗い終わった直後に入って来たのは、トールギスの腹心の部下だった。
「よう、シュウト!料理、誰の為に作るんだ?」
当の本人に会った途端にこの質問か?と疑いたくなるヴァイエイトだが、あえて口には出さない。
「ヴァイエイト、メリクリウス!誰って……皆?
トールギスにヴァイエイトとメリクリウスでしょ……デスサイズ、それに、ポーンリーオー……」
「本当に、皆なんだなぁ……」
そう言いつつも、2人は自分の名前があったことに、喜びを感じていた。
「ですが……シュウト君。ポーンリーオーには無理だと思います……」
「どうして?」
「それは私達自身も、ポーンリーオーの数が確認しきれて居ないからです」
そういえば、とシュウトは頭を回転させる。
いつも廊下で会うのは同じ格好、同じ口調。
だが、意思や自我はまったく別だ。
城の中でも、毎回会うのが違うというのに、一体どれぐらい存在しているのだろうか?
「そういえば、そうかも……」
「なら、ポーンリーオー以外の方に作ったらどうでしょう?」
「うん、そうする!」
シュウトの顔からは、残念そうな思いが手に取るようにわかった。
「まぁ、あの真っ黒野郎には作らなくていいと思うけどな……」
メリクリウスはムッとしながら呟くが、後ろに気配を感じ、振り返る。
「メリクリウス、真っ黒野郎とは誰を指すのでしょうかね」
それでも表情を変えず、言い返す。
「……分かってると思ったんだけどな?」
その争いを横目に、ヴァイエイトはシュウトと話に耽っていた。

「なんだ?これは……」
「何って……だから、肉じゃがとご飯とお味噌汁」
長いテーブルが置かれた食堂には、珍しく5人が椅子に腰掛けていた。
白いテーブルクロスに床は赤い絨毯。
ジリジリと光る蝋燭。
「トールギス様が頂かないのなら、先に頂きます」
ヴァイエイトはフォークで、肉じゃがのじゃが芋を口に運ぶ。
その行為は他の3人を釘付けにした。
「さすが、シュウト君!料理も出来るとはバッチリですね」
「そうかな?ありがとう、ヴァイエイト!」
ヴァイエイトの顔は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ちっ!ヴァイエイトの奴!……」
メリクリウスも同じように、じゃが芋を口に運ぶ。
「――なかなかいける!!」
「本当に?!」
今回ばかりはシュウトの喜びの声も、メリクリウスには届いていなかった。
ラクロアは洋食が主で、和食は殆ど知られていない。
和食という物がこんなに美味しい物だということに、メリクリウスにとってはカルチャーショックだった。
ヴァイエイトがトールギスとデスイサイズを睨む。
まるで、さっさと食べろと促しているようだった。
その間にもヴァイエイトとメリクリウスの手は止まる事は無い。
「なら、頂きましょうか?我が主」
「そうだな……」
2人は同時に口の中へじゃが芋を入れる。
喉を通ると同時に、デスサイズは口を開く。
「ほぅ……これは、なかなか……」
「よかったー!」
「和食という物も、悪くないですね」
そう言って、再び、じゃが芋を口へと運んだ。
「……シュウト、これは何という料理だ?」
「え?肉じゃがだよ?」
「肉じゃが……」
トールギスが無意識のうちに、言葉を繰り返す。
「肉じゃが……またそのうち、作ってくれ」
そう言っていたトールギスの手は止まることなく、料理を口へと運んでいた。