コゲンタは頼まれた作業をせずに屋根の上で寝そべっていた。
目線を自分の主に向ければ一向に庭の掃き掃除をしている。
久しぶりに戦い以外で呼ばれたと思ったら「屋根を修理して欲しい」と。
空を仰いでいると急に影が現れるものだから、視線を自分の頭上へと移す。
逆光で眩しいが声の主は確認できた。
「何だお名前(女)か」
「何だって……何?」
手のつけられていない道具を見てお名前(女)は少し困ったようにため息をついた。
寝そべったままのコゲンタの隣に腰を降ろす。
「まだやってなかったの?」
「なんでこの俺様がやらなきゃならねんだ……」
呆れた態度のコゲンタを見てお名前(女)は苦笑を浮かべる。
リクはどうも式神の使役を間違えてる気がするが……闘神士になって日が浅いこともありお名前(女)が何か言うことはなかった。
「貴方と私とリクは同じ屋根の下で暮らしている。ようは家族でしょ!家族は助け合うもの、だからやるの」
「家族だぁ~?」
「じゃあ、ヤクモやイヅナさんのことは家族だとは思わなかったの?」
ドキリ!
毎回核心に近いことだけ言い残されて残るのは事実から目を逸らしていた自身だけ。
感謝すべきことなのに負けているようで素直になれなかった。
天才と言われるほどの戦闘センスに見違えるほどの実力をつけた元契約者。
お名前(女)やイヅナも精一杯サポートしてくれた。
1つの家に住んだ。
1つの希望の為に戦った。
「そんなことはねーけどよ……たく、お前は何にも変わらないな」
「お褒めの言葉としておっておきます」
コゲンタが懐かしそうにと笑うものだから、ついお名前(女)も顔がほころぶ。
日はいつの間にか高い位置まで登り、12時を知らせる鐘が鳴る。
お名前(女)は立ち上がってコゲンタの腕を引っ張る。
「ほら、さっさと片付けちゃうよ?」