だからあなたは笑ってください 一度も傷ついたことがないふりをして

パタパタパタ……

少し忙しい子供の足音が近づいてくる。
はやてとリィンは入り口から入ってきた相手に視線を送る。

「お名前(女)、おはよう」
「おはようございます!はやてさん、リィンちゃん」
近くに飛んできた、リィンに明るく挨拶するお名前(女)は8年前の姿そのものだ。

お名前(女)を保護してから監視の為に時空管理局に、再び入局してから数ヶ月が経過した。
このような姿にした人物は依然特定出来ぬままで、自分の部隊が始まろうとしている。

後見人たちから“彼女を囮に使う”という言葉を聞いた瞬間、はやては身が竦んだのを覚えている。
今回機動六課が設立された真の目的の糸口となるならば、これ以上に超した的はない。
どういう訳か、極秘の囮作戦の情報をお名前(女)から直接聞かれた時は上手く笑えていただろうか。
しかも既に後見人の1人であるカリム・グラシアに自分から進言したというではないか。
思わず、震えた腕で抱きしめたのを、はやてはふと思い出していた。

「今日からだね、機動六課。でも階級もない私を入れていいのですか?」
「これは私からの希望やからな。なのはちゃんやフェイトちゃんも、もうじき来るで」
「うん……」
2人の親友を聞いて、お名前(女)は少し顔を歪ませた。
保護されてから実際に会うのはこれが初めてだからだ。
「怖いんですか?」
リィンが顔を覗き込みながら聞くと、コクリと頷いたのがわかる。
はやてが席を立って、優しく頭を撫でてから抱きしめる。
「大丈夫やて。最初は2人とも驚くかもしれへん。けどあたしも、皆もわかってる」
お名前(女)がはやてにすがるように抱きつけば、はやてもリィンが微笑んだ。
「ありがとう、はやてさん」

嗚呼、どうか彼女に安からかな時間が訪れますように