執着する心

地球連合軍戦艦オルテュギア。
ベッドに無理矢理押さえつけられる格好で少年は抵抗していた。
血のように燃えたぎる紅い瞳と吸い込まれそうな黒い髪。
問えば全員が美形だと答えるであろう整っている顔を歪ませた。

「痛い……」
我慢していた声が零れ、苦しそうに呼吸を繰り返す。
一息つけたかと思うとすぐに次が襲ってくる。
「カナード……やめ……」
相手の名を呼んでもうんともすんとも言わない。
抵抗が無駄だと解っていても“生きたい”本能に忠実だった。

「だから、カナード!」
「うるさい!」
お名前(男)の首を少し強く絞める。
掴むその腕を精一杯握りしめるが中々思うように体が動かない。
暫くしてから離すと、急激に空気を吸ったことで咳き込む。
よくされる行動とはいえ“普段以上に”きつく絞められた首が痛い。

「犯しても犯してもお前は何故、俺を慕う?」
「大切な家族、だから」
聞いたカナードを呆れたようにお名前(男)を見下ろす。
お名前(男)の耳をぺろりと舐め、耳たぶを甘噛みした。
「ん……」
「家族――それは聞き飽きたな」
服を捲り、膨らんでいない胸を触る。
酷い扱いをされてもピンク色の乳首は少しだけ硬くなっていた。

先ほど優しく扱っていた耳たぶを今度は歯形が付きそうなほど噛みつく。
「ぐぃ!」
変な声をあげながら、あまりの痛さで眉間に皺が寄る。
お名前(男)顔をみてカナードは激しく口づけをして舌を絡める。

「ふぁ……んん、あぁ……」
「もう一度聞く、何故俺を慕う?」

甘いキスと、先ほどの尋常ではない暴力を思い出して唇が震える。
お名前(男)はいつも決まってこう言う。
「大好きな人だから――っ!!!」

次の瞬間鈍い音がして、想像を絶する痛みが襲う。
あまりの痛さに思わず片腕でその場所を押さえる。
人肌のように温かい、赤い液体だった。

お名前(男)は瞬時にこれが何か悟る。
そこを攻撃した物は確かに腕からベットへ貫通していた。
部屋には銃を撃ったと漂わせる火薬の臭いが充満する。
血は少しだけ壁に飛び散っており、ぼんやりそれを見たお名前(男)は(掃除が大変だ)と思った。

痛いのは一箇所なのに体中が「痛い痛い!」悲鳴を上げる!
「お前を見ているとあいつを思い出す」
それは言葉に出さずとも解るもの――キラ・ヤマト。
カナードは銃を放り投げ、優しくの頭を撫でた。
腕がまだ痛いし、頭を撫でるぐらいなら手当てをして欲しい。
そんなこと言えば投げ捨てた拳銃をまた構えるかもしれない。
ぐっと撃たれた腕に力を込めて、痛みを紛らわした。

撫でるのに満足したカナードはを抱きかかえ、部屋を出る。
「カナード?!」
「医務室へ連れて行く」
「あー、うん……」
「悪かったな」
カナードは少しだけ後悔しているらしく、そんな表情を見たら責めるに責められなかった。
普段から暴力的な行為は多かったとはいえ、発砲することは一度もなかった。
箇所が腕で良かった、体の中枢に撃たれたら後々面倒だ。

「別に平気だよ。好きな人だから、何されても平気だ」
「そうか」