ユニウスセブンへと近づくと確かにジンやザクが交戦しているのがわかる。お名前(女)は内心良い気分ではなかった。 決してユニウスセブンが地球に落ちるということではなく、何故分かり合えないのかという方だ。簡単な問題ではないということはわかっているが、どうしても諦めきれない。それは、自分にも言えることだ、とその言葉は心の奥へと落ちていく。
セレネはビームライフルを構え、作業を妨害しているジンへと撃つ。
「?!」
そのジンは一瞬にして避け、そしてセレネへ向かってくる。最新鋭だからと過信しているわけではないが、ジンのような動きではない。それを腰から抜いたビームサーベルで応戦し、隙をついて、首だけを切り落とす。周りは混戦状態で、インパルスがアビス、ルナマリア機はガイア、アスランがカオスを相手にしていた。それを見た、セレネはメテオブレイカーを守ってるザクを守るようにして、阻かる。そして、翼に収納されていた、プラズマ収束ビームを放った。
『フリーダム?! いや……』
「あ、ディアッカさん?!」
『お名前(女)?!』
「ご無事で何よりです!……この!!」
近づいてきたジンにビームライフルを撃つが避け再び、遠くへ飛び立つ。
『いやー……最新鋭の機体のパイロットにさせたとは聞いていたが……』
ディアッカが詰まる。本当だったとは、という言葉は心の中に留めて置く。
「ディアッカさん、早くメテオブレイカーを……!」
『わかった!!』
ザクはメテオブレイカーを固定、作業を開始し、セレネは作業を妨害するジンにビームライフルを構える。そして当たれば良いが、とにかくメテオブイカーに近づけさせないように撃つ。こういう時は、ディフュージョンのドラグーンが乱射には向く。だが、味方にも当たる可能性があるので判断が困るといえばそうだ。
『お名前(女)、OKだ!!』
そう言ったディアッカはスイッチを押し、メテオブレイカーはユニウスセブンの地中へも進み始める。セレネもザクと一緒にユニウスセブンの上空へと上がる。
『グレイトォ!!やったぜ!』
ユニウスセブンは丁度真ん中から2つに割れ、1つは宇宙空間に漂う。確かに喜ばしいことだが……その気持ちを代弁してくれたのは紛れも無いアスランだった。 『だが、まだまだだ……もっと細かく砕かないと……』
『アスラン……?!』
「アスランさん!!」
ディアッカとお名前(女)から驚きの声が出る。しかし、それとは反対にイザークは怒りが混じっただが、嬉しそうな反応を返す。
『貴様!!こんな所で何をやっている!!』
『そんなことはどうでもいい!今は作業を急ぐんだ!!』
『わかっている!!!お名前(女)もちゃんとやっているようだな……安心した』
「え、あ、はぃ……」
イザークの言葉を聴いてアスランは疑問に思わずにはいられなかった。それ以前に、彼がこんなこと言うとは思ってもみなかったからだ
。
会話が止まり、レーダーとそして肉眼でもはっきりと、妨害するMSが見える。イザークとアスランが散開し、各機と応戦する。セレネもビームライフルを構え何発か放った後、ビームサーベルで止めを指した。だが、直ぐに上から、無数のビームが振ってくる。
『イザーク!!』
『煩い!!お名前(女)はディアッカとメテオブレイカーの作業を!!』
「はい!ディアッカさん、急ぎましょう!」
セレネはザクが地面に固定するのを手伝い、真上で行われている戦闘を見る。
『今は俺が隊長だ命令するな!!民間人がぁあ!!!』
今はそんなときではないのに、突っ込みたい所だがお名前(女)は作業をしながら通信に耳を傾ける。きっと昔の仲間に会えて嬉しいのだろうとう羨ましそうに思う。だが、戦闘は続いており、イザークとアスランが押している状態だった。後一歩、という所で、宇宙に小さく見えるボギー・1から帰還信号が上がる。こちらの母艦である、ミネルバからも信号が上がった。
『ちぃ……限界高度か!』
そして、全てのMSに通信が入る。
『ミネルバが艦主砲を撃ちながら共に降下する?!』
確かに後の手はそれしかなかった。もしかしたら、地球への落下が防げるかも。そんな希望が大きくなりセレネはミネルバへと進路をとるが、何かに捕まれて全く別の方向へと飛ぶ。
「えぇ!?」
『お名前(女)?!』
「あ、シン!な、どうなってんの?!」
たまたま聞こえたシンに聞いてみるが、お名前(女)にとっては何が何だかわからない状態。以前のデブリ戦より混乱している。
『議長、コイツは地球に降下させるわけにはいきません!』
声の主はイザークだった。
モニターにはイザークとミネルバのブリッジが映し出される。
『……確かに君は“自分がいつでも駆けつけられる。地球には降下させない”という理由でセレネへのパイロットを許可、したのだったな』
「そんな……イザークさん、待ってください!!」
『議長からの承諾もある、行くぞ!』
「イザークさん!」
こればっかりはお名前(女)もどうしようも出来ず、ただミネルバから離れるのを見ているだけだった。
「皆……シン……」
声はユニウスセブンの落下音に消えた。
セレネはスラッシュザクファントムにナスカ級戦艦に押し込まれる。そして機体が固定したとわかると、ハッチを開きイザークの元へ詰め寄った。
「イザークさん!どうしてですか?!」
「どうもこうもそういうことだ」
そう言ったイザークはお名前(女)から見れば今までにない姿。ここまで冷たく言われたことはなかった。そのせいか、お名前(女)は一瞬言葉に詰まる。
「隊長、今はまだそんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけどねー」
ザクから降りてきたディアッカがイザークの横を通り抜けながら言った。イザークとお名前(女)はディアッカの言ったことに反論出来ない。
「……お名前(女)、お前もブリッジへ来い」
イザークの方が階級は上である以上、言われればどうすることも出来ない。お名前(女)はその言葉に従うしかなかった。
お名前(女)の中に常に置いてある紅い軍服に着替えると急いでブリッジへと向かう。不思議とまだ、道は覚えているようですんなり進むことが出来る。 ナスカ級に慣れているわけではなく、この艦に慣れているのだ。シン達には言ってはいないが、以前はこのジュール隊に所属していた。大好きで家族のようなこの隊から離れるのは嫌だったが、やはりあの隊長の命令に逆らうことは出来ず寂しい気持ちになったのは今でも覚えている。
ブリッジへ入ると、イザークとディアッカの姿。そして目の前に地球が広がる。
「ひどい……」
お名前(女)はぽつりと言葉を漏らす。懸命に砕いたものの、破片は地球に被害をもたらしていた。わかっていた筈だが本当に目で見ると事の大きさが物凄く感じられる。
「被害状況は?」
イザークがオペレーターに聞くが、顔が曇ったままだ。
「まだ不明な点も多いですが……赤道上が一番危険かと思われます。加えて、1つ砕き切れなかったものが、地球を1周しつつあります」
地球を1周するなど、落ちたらどれだけの被害になるのだろうか。考えただけでもぞっとした。
「……問題はこの後どうするかだ、ジュール隊は本国へと帰還する!」
「了解」
「ディアッカ、お前はブリッジにて待機。何かあったら呼べ」
「はいはい」 そっけない返事を返されたが、イザークはお名前(女)の腕を引っ張りブリッジを後にした。
隊長室に連れてこられたお名前(女)だが、イザークも同様に一言も喋らなかった。
「ジュール隊は本国へ戻る、お前は本家へ帰れ」
「え?!」
言い放たれた言葉は思いがけないもので、お名前(女)は間の抜けた声を出す。その言葉には打点がついていそうなものだ。
「何故ですか?私が今、所属しているのはミネルバです」
「だとしてもだ、俺が後見人だという事を忘れたわけではないだろう?」
“後見人”――その言葉が出ると、何も言い返せない。今まで何度か対立し、言い合うこともあったが“後見人”という単語までは出てこなかった。それが珍しくついお名前(女)もカッとなる。
「――~~ですが、転属を命じたのはジュール隊長ではなりませんか!」
「議長の許可のある、俺の意見に従ってもらう」
この艦に乗っている以上、自分が嫌と言っても無理にでも帰ることにはなるだろう。お名前(女)で出ても行く場所など無い上、逆に軍に逆らったことにもなりかねない。それ以上に、この艦のイザークへの忠誠心は恐ろしいもので結束が強すぎるのもある。
「……ようはどういうことなんですか?」
「次の指示があるまで、休暇を命じる。とにかく本家へ帰れ、母上もお前の帰りを待っている」
「わかりました」
どうしようもない気持ちのまま、お名前(女)は隊長室を出た。
だがすぐにそのドアは開き、ディアッカが入ってくる。
「ディアッカか」
「イザーク、お前、お名前(女)に自分の気持ちを押し付けすぎじゃないのか?」
図星のようで、イザークは何も言わない。そしてディアッカから視線を逸らす。
「アイツめちゃくちゃ怒ってたぜ?ちょんけちょんに言ってたからな。最後に感謝もしているんです、とも言ってたけどさ……」
ただ様子を見に来ただけのようでディアッカはすぐにドアの方へ向かう。
「気持ちもあんなこと言った理由も言った方が良いと思うけどな、俺は……。そうそう、アイツ狙ってる奴も増えてきてるみたいだから嫌われないように機嫌直しぐらいしとけよ?」
そういうとディアッカはブリッジへと戻って行った。