出会いは偶然

丸藤亮は、アカデミアが冬休みで自宅に帰省していた。
弟に久しぶりに会って様子を聞いたが、両親は相変わらず仕事で世界を飛び回っているらしい。

季節は北風が寒く、陽が落ちる時間も早い。
今日で12月は終わる――大晦日なのに子供たちは家に帰る気配はなく、公園で続くデュエルは終わることはない。
デュエルディスクを身に着けた少年が公園から出てくる……この少年もそうなのだろう。
微笑ましい光景に、亮は何も思わず通り過ぎようとした。

「……アンタ、カイザー亮だろ?」
その言葉を聞くまでは。

「デュエル・アカデミアの人間か?」
DAは全国、いや、世界から人間が集まる。
デュエリストなら “デュエル・アカデミアの帝王” “カイザー亮” と呼ばれる存在を知っていても不思議ではなかった。
「いや、違うけど……。デュエル・アカデミアって楽しいのか? 毎日、デュエルできんの?」
本当にデュエルが好きなのだろう、すぐに解った。
「毎日デュエルは出来る。――が、筆記や講座の授業もある」
「え~!! 実技だけじゃないのか」
答えが、世の中の事実を突きつけたように、彼はがっくり肩を落とした。

「カイザーも強いんだろうな、ワクワクするぜ!」
「ならば、アカデミアに来ればいいだろう」
「あ~、それが出来たらいいな……」
夕日と空にぼんやり浮かんでいる月の明かりが亮の瞳に神秘的に彼を映す。
理由を問いたかったが、街角で会っただけの人間に聞くのも無粋だろう。
「俺、カイザーとデュエルしたいからDAに行けるように頑張るぜ。ガッチャ!またな、カイザー!」
彼は駆け足で市街地へ消えていった。

名前も何処の人間か解らない。
またデュエル・アカデミアで彼に会えることを信じて。

家に帰ったら弟に出迎えられた。
「遅かったね。でも何か嬉しそう。お兄さん、何かあったの?」
自分は顔に出してるつもりはなかったのに――この時点で惚れてしまったのかもしれない。