外装の修理音が、煩いほど耳に響く。
キラは部屋に戻り、ベッドに横たわっていた。
話せと言われても言うわけにもいかず、腕を振り解いて戻ってきたのが数時間前のことだ。
今頃アスランとカガリは、デュランダルに自分のことを問い詰めていると想像出来てしまう。
アメジストの瞳が、ドアで点滅する液晶をぼんやり見つめた。
『あの…!議長から言い付けがありまして参りました』
聞こえた声色は幼さが残る少年のものだった。
急いで立ち上がってキラはロックを外す。
そこにいたのは、自分と同じぐらいの背で黒髪が、少年の紅い瞳に映える。
「どうぞ」
彼を部屋へ招き入れてから気づく――(赤服じゃないか!)
停戦後アスランに聞いた話だと、赤服は“エースのみに与えられる赤というプライド”らしい。
ならば彼も相当の腕なのだろう。
「それで、議長は何を?」
「あの!ユニウスセブンの件は…」
「知ってる…。オーブの代表があんなに大声で騒いでたら誰でもわかるよ」
「えぇ……。このミネルバもユニウスセブンの破壊活動に参加することになりました。貴方を無事にこの艦から降りるまで、私がお世話をさせて頂きます」
「そう。僕は…キラ、キラ・ヒビキ」
名乗るのに抵抗はあるが“ヤマト”というファミリーネームは二度と使わないと決めていた。
ヒビキと名乗って殺されても構わない。
「私はシン・アスカです。あ、シンと呼んでください」
「よろしく、シン。敬語もいいし、僕もキラでいいよ」
議長の知人として使わされたのに、こんなことを言い出すのは無かっただろう。
シンは戸惑いながら「わかりました」と返事をした。
「そういえば、キラはあのオーブの代表と知り合いなんですか?」
早速核心を突いてきて、頭が痛い。
そう、自分も好奇心には勝てないのだ。
「うん、古い知人でね。最近は全然連絡してなかったから……。君はオーブが嫌いなの?」
「嫌いです、あんな国!」
即答されて、キラは拍子抜けしたように目を丸くした。
握りしめた拳と瞳を見れば、強い想いを抱いているのがよく解る。
「僕もあまり好きじゃないな、あの国は」
「キラも?」
「必要ないと言っても、結局武力は武力でないと抑えられない」
紫色の瞳が揺らぐのを見て、シンはドキリとする。
「見て見ぬふり。聞いて聞かぬふり。それだけなんだ」