「明日すぐに侵略しに行くわけではない。すぐに結論を出せとも言わん」
そう言ってくれて、嬉しかった。
心が軽くなったような気がしたから。
それでも時間は残されてないんだよね。
全ての謎は解けた。
彼がこの世界に連れてきた理由も、自分の気持ちも。
「その顔だと、聞いてきたんですね……」
ついさっき会い、別れたばかりのヴァイエイトとメリクリウスだ。
顔には少し痣とかすり傷に加え、メリクリウスに限ってはちょっとした切り傷がある。
「だ、大丈夫なの!?」
「ああ、こっちは平気!怪我すんのは慣れてるしな!」
「それに、あの人のことは心配要りませんよ」
ヴァイエイトが言う。
シュウトはあの人という言葉で、デスサイズのことだと分かってしまう。
メイリウスも思い出したように、手をぽんと叩きながら言った。
「あぁ、そうそう!デスサイズなら心配無用だぜ!
口に布、巻いて、ロープで簀巻きにした上に魔法をかけて、物置に突っ込んでおいたからな!」
何故か、その時の光景を容易に想像出来てしまうのが怖い。
「君がどんな決断をしようと、誰も文句はいいません」
さすが腹心の部下だけあって、トールギスのことは分かりきっているようだった。
「うん、ありがとう……」
刻々と時間だけが過ぎていく。
ダークアクシズも倒さなきゃいけない。
でも、彼とも一緒に居たい。
これは僕の、勝手な我が侭なんだよね。
シュウトはベットの中には居らず、外をずっと眺めていた。
きっと寝ようと思っても寝られないだろう。
月の光だけがキラキラと輝いている。
ネオトピアに帰るのが普通の選択だろう。
それでも想いがそれを邪魔する。
一緒に隣に居たい、そう思ってしまう。
「……まだ、寝てなかったのか?」
「……うん……」
こんな夜中に訪ねてくるのは彼しかいない。
「それに、眠れるわけ無いよ……」
「まだ、結論を急ぐ必要は――」
「ねぇ、トールギス……」
トールギスの言葉を遮るようにシュウトは話し始めた。
「トールギス、僕のこと、本当に好き?本当に好き?」
最後の方の方になると、声が薄れる。
「ああ、好きだ……」
きっとあの時と変わらず、真剣な顔で言っているのだろう。
決断から逃れたくて、どうにかなってしまいそうだった。
トールギスを見ると、月の光が金髪の髪の毛を照らし出し、幻想的だった。
見とれている間にトールギスはシュウトに腕を回し抱きしめ、そして唇に触れるだけのキスを送る。
「シュウト、オレの元にいろ。ラクロアはこんな状況だが、それでも……」
こういう言葉はちゃんとした女の子に言うべきだと思う。
それでも言われて嬉しい自分がいる。
「本当に……僕で……」
「…………」
トールギスは何も言わない。
が、ちゃんと抱きしめる腕に力が篭る。
確かに感じる。温もりを。