Double Moon

光にキラキラと光る水面みなも。
水鏡にはまだ何も映されてはいない。
月の光だけがやけに目を引き、空は日中と変わりのないあの空。
その近くに佇むのは、闇の騎士と人間の少年。
少年が心配そうに水鏡を見つめる。
闇の騎士が呪文を唱えるとその鏡にはゆらりと映像が映し出された。

 

「見えますか? 彼の姿」

「トール、ギス?――あれは!!」
彼が、手を伸ばすか迷っているもの、それはあの魔剣だった。

「あれは……だって、あれは!
「あれは、何なのです?」

知ってるくせに白々しいと感じる。
以前にデスサイズから教えてもらった魔剣だ。
あの魔剣には恐ろしい秘密があると――なのに何故それを渡すのだろうか。

「あれには恐ろしい秘密があるって……」
「おや、彼は手に取ってしまうようですね」

「止めて!!」

聞こえるはずが無いのに叫んでしまう。
気持ちだけが大きいのにも関わらず、想いは届かない。

「お願い、止めさせて!!」
「…………」
「お願い!何でも言う事、聞くから!」

自分が無力だと思えば思う程に瞳には涙が溜まる。
デスサイズはその言葉を待っていたとばかりに口を開く。

「ふふ……シュウトがそんなにいうのなら、良いでしょう。何でも、といいましたね?なら聞いてもらいましょうか、私の物になると――」

「えっ?」
「聞けないのですか?」
「だって……」

自分が好きなのはトールギスで。
いつもは恥ずかしいと思う行為も、それさえも今は恋しくて。
彼は言った――触っていいのは自分だけ、見ていいのは自分だけだと。

「だって……僕は……」

言葉が出ない。
その間に、デスサイズが近づいてくると同時に一気に視界は逆転する。
顎を押さえられ視線の先にはデスサイズの顔。

「じっくり教えてあげますよ。自分の立場をね……」
デスサイズはそっと、シュウトの唇にキスを落とす。
自分の無力さからか、それとも彼があれを手に取ってしまうからか?
瞳から床へ、涙が零れ落ちた。