止まれはしない、戻れもしないのに

瞳を閉じればよみがえるあの光景。
大地は枯れ。
空は邪悪を意味する、赤い色。
なぜなのかとしか考えられなかった。

「ゼロ、大丈夫?」
ハッとして、隣にいるシュウトを見る。
「すまない……」
「いいよ。ラクロアのこと考えてたんでしょ?」
シュウトには何を考えていたの、お見通しだった。

会話している最中にふと思い出した故郷。
今の状況も気になるが、一番は姫のこと。
守れなかったあの人。
そんなことを思っていたら、会話途中なのにも関わらずぼーっとしてしまったらしい。

「いや、今のは私のせいだ……」
会話が途切れ、ゼロもシュウトも何と言っていいのかわからなかった。
シュウトにしてみれば、元気を出してなどいえるはずもなく。
ゼロにしてみれば、折角、シュウトとの会話をそっちのけにしてしまったので少し気まずい。

思い切って会話を再会させたのはシュウトだ。
「――ゼロってさ! ご飯は食べられないの?」
後から考えれば、何を言い出してしまったのかとシュウトは少し後悔した。
「食べられないこともない、物質をマナへと変化させて取り込むのだ」
「そうなんだ……」
また、会話が途切れそうになる。
「あー……なら、飲み物とかもなの?」
「そういうことになるな」
今度は完全にぷつりと会話が途切れる。

誰も。
何も。
全ての音がなくなった様だった。

「ゼロ……『ラクロアを救えるのか?』って考えてるでしょ?」
「なっ!」
図星なのか、ゼロは勢いよく、シュウトを見る。
「ゼロ……100年先のことは誰も知らない。けど、わかることもあるよ。僕達がラクロアを救いに行くんだ!無理だってことは、わかってるけど……でも……」
一瞬、シュウトは言葉が詰まったように止める。
だが、ゼロは何も言わずに、続きを待つ。
「1人で考え込まないでよ! 皆が、いるから……」

ゼロはぎゅっと、シュウトを抱きしめる。
「え!ぜ、ゼロ!?!」
「……私は……」
自分は何を考えていたのだろうか?
今は1人ではないのに。
再び、大切な存在が出来たのに。
仲間が出来たというのに。
「そうだった。私には……シュウトやキャプテン、爆熱丸、そしてS.D.G.Fの仲間がいる。シュウト、君が言っている事は正しいかもしれないな」
「え?」
「確かに100年先のことは誰もしらない。だが、私達が救えば良い」
「うん! 転送装置が完成すれば、またラクロアに行けるもんね」
そしてそっと、ゼロはシュウトを抱きしめる腕に力を込めた。

一瞬でも忘れてしまった。
仲間がいることを。
シュウトがいることを。
自分だけで救うわけじゃない。

仲間と共に救うのだ。

お題配布元:hazy