慌てた顔をするディーノたちを尻目に話は続く。
「笑えない冗談だね」
ぶすっとした表情は未来にいる恋人の雲雀恭弥と何も変わらない。
「会いに行ってもらえませんか?淋しがってると思うんです」
「あの子が戻ってくればいいだろう。そうしたら、僕が鳴き死ぬまで可愛がってあげるよ」
「オレを倒さないと戻って来れない、としたら?」
次の瞬間、左側から気配を察知して少し身体を向けて避けた。
「ワオ、避けたね!――なら、僕が噛み殺すだけ」
お互い間合いを取り、飛んでくるトンファーを上手く受け流す。
その行動が勘に触った雲雀は咄嗟に攻撃を止めて言う。
「本気、だしたら?」
先程まであった余裕は消え去り、鋭い殺気を放つ。
無言のまま綱吉はトレードマークの27と描かれた手袋をはめると額の死ぬ気の炎を灯す。
「あの子と同じことをするんだね」
近づいてきた雲雀の行動は、今の綱吉には読めていた。
両手で上手くトンファーを掴み、押し返したら相手は驚いたようで。
「オレが知る10年後の雲雀恭弥には到底及ばないな」
短く息を吐き出せばグローブはただの手袋に戻り、死ぬ気の炎も消える。
そして屋上からアジトへ帰るために階段を下りようとする。
「逃げるんだ?」
「……リングに炎を灯せるようになったら、また相手しますね」
きっとイライラで凄い顔をしているのだろう、と綱吉は簡単に想像出来た。
(ディーノさんごめんなさい……)
胸のうちで思っても今更遅かった。
ディーノが声をかけても、うるさいと一言で片付ける。
雲雀は右手の中指に嵌るボンゴレリングを見つめながら
(ああ、イライラする!!噛み殺したい)
そう、思った。
一瞬にして、リングから紫色の淡い揺らめきが広がる。
今朝からのことを手当たり次第に思い出すほど、炎は大きくなる。
極めつけはあの男だ。
「おいおい……恭弥が次にツナに会った時が恐いぜ」
そう誰に言ったわけでもないディーノの呟きは部下数人が聞いてただけ。
とんでもない事をした彼も、見事に乗せられた彼も、今は形振り構っていられないのだ。