ぼふん!
大きな音が鳴るとそこには現れる筈の姿はない。
それを確認して男は何事も無かったかのように歩き出す。
身長はさほど高くない、だが大人に似た色気を放ちそれとは別に近寄りがたい何かがある。
「次はダメツナの番か、」
風に言葉は掻き消され、帽子を深く被った。
(明らかに場違いな格好なんだけど……)
黒いスーツの2人組が並盛町の団地を歩けば奥様方は顔を染めて振り返る。
それは裏社会が盛大に開催するパーティーで慣れた。
自分が飛ばされた直後。
すぐに獄寺隼人が飛ばされたことで体制を立てるのが、少しは早まるだろう。
煙が晴れて目が合えば相手の瞳は現状把握を必死に行うもので。
「久しぶり」
少し俯き加減で切なそうに綱吉が微笑みながら言う。
獄寺は恐る恐る手を取り、その場に蹲って声を殺して泣いていた。
「10代目……!!ご無事でよかった」
抱きしめることも返答することも出来ず、温もりのある獄寺の手を握り握す。
そのことを思い出すと、誰かに胸を抉られた気分だった。
「10代目、リボーンさんとはどのように合流する予定なんスか?」
「実はそういうのは一切決めてないんだ、きっと向こうが見つけてくれるよ」
そう、見つけてくれないと困るのだ。
綱吉は棺の中にいた関係で財布自体を持っていない。
獄寺の財布も確認したが日本通貨がいくらかあって、少しは生活出来るだろう。
早く見つけてもらわなければ生命危機に発展する。
「だからお前はダメツナなんだ」
聞きなれた声で振り返れば、探し人。
非73線を浴び身体が朽ちて死ぬ以前、そのままの姿だ。
「リボーンさん!」
「隼人、お前も来たか」
お互いに名前を呼んで嬉しそうに確かめ合う2人。
綱吉だけは無表情のまま、内心複雑だった。
葬儀は自分も参列し、誰もが死を悔やんだ光景を思い出すと吐き気がする。
「アジトとブツの確保も終わってるぞ、明日には本格的に動けるようになる」
「助かるよリボーン」
「いつも以上に働かされたから給料でも上げてもらうか……」
3人で10年前のように歩く。
「アジトに着いたら紅茶入れますね」
「ありがとう、隼人」
「隼人がついでに夕飯も作ってくれるんだな?」
瞼を閉じて思い出せば、間食の菓子を進める紅茶。
手作りでも高級料理に引けを取らない右腕の晩餐が浮かぶ。
暖かくて、眩暈がしそうだ。
アジトに到着して温かい紅茶を口に運ぶ。
腕は落ちていないようで、鼻をくすぶる香りだけで本部の日常を思い出す。
そんな記憶を消したくて、綱吉は並盛中の方角を見た。