彼氏が理想のタイプとは限らない!

昼休み屋上でお弁当をつつく、いつもの3人。
珍しく山本が彼氏であるあの風紀委員長の話題を出したのが引き金だったのだ。

「そういえばツナ、ヒバリとは上手くいってんのか?」
「えっ?」
思わず箸を落としそうになるが、現実に戻ってぎゅっと思わず強く握る。
恐る恐る獄寺の方へ視線を移すが強張った表情でパンを口に運ぶだけだった。
「えっと……そこそこ?」
「でも昨日、追いかけられてただろ?」
嗚呼、そういえば……と綱吉は頭をフル回転させて思い出す。
「あれはヒバリさんの約束した時間に遅刻した上にちょっとヘマしたから」
そう、睨まれた瞳に殺気を感じトンファーを持ち出されたので思わず応接室から飛び出したのだ。
「10代目!ヒバリの野郎が理想なンですか!?」
拳を震わせ真っ直ぐな瞳で直視する獄寺を見たら答えないわけにはいかず。
「理想っていうか……それは少し違うんじゃないかな?」
あくまで疑問系、自己満足でも疑問系にさせて欲しい。
次の瞬間、校内へ入る扉が閉まった音で頭は真っ白になった。

キーンコーンカーンコーン

HRの終わりを告げるチャイムが鳴っても綱吉は机にへばりついていた。
(あの時、理想の人だと答えればよかった……)
もう一度考えてみれば、彼氏が理想のタイプとは限らないのは当然だ。
雲雀のどうだろうと思う部分(何でも噛み殺すところとか)が少なからずあるのは事実で。
鞄を持って応接室に向かう廊下では胃がムカついて項垂れるしかなかった。

ノックをすればどうぞ、とすぐに返事が返ってくる。
ビクビクしながらソファーにも座らず、綱吉はすぐに雲雀の所へ近寄る。
「ヒバリさん、昼休みの会話聞いてたんじゃないんですか……?」
「何のことだい?」
あくまでこの人は何も聞かないつもりだ、それでもこの部屋に入れてくれたのは優しさなのだろう。
「扉が閉まる時に学ランが見えましたから」
パタンと出席簿が閉じられて大きなデスクに置かれる。
「ふぅん、それがなんだっていうんだい?」
「じゃあヒバリさんはオレに気に入らないところってないんですか?」
こんなこと言うなんで自分の首を絞める行為だと、綱吉は発言してから後悔した。
わかっていても駄目な部分を指摘されるのは苦手なものがある。
大切な存在に言われるからこそ、それは事実なんだと突き刺さるからだ。

「君の駄目な所、全てだよ」
そのまま雲雀の声が脳内に響く。
「人懐っこくて誰にでも愛想を振りまく。頼り甲斐がなくて何も出来ない。誰とでもすぐに群れる」
これではまるで校内の生徒がダメツナと言うのと一緒ではないか。
今までこんなにはっきり言われたのはリボーン以外におらず、どういう反応を返せばいいのか焦り俯いてしまう。
「その……」
「だからこそ、君を愛して手放したくない」
(嗚呼……)
ヘマをしたとき甘えてはいけないけれど、いつも周囲が雲雀がフォローしてくれた。
悲しい苦しいときは雲雀が抱きしめてくれた。
良い所が無いなんて一言もいってない。

雲雀が暴走してれば綱吉が止めに入れば大抵は言うことを聞いてくれる。
無理なことだと解っていても、甘えれば優しく声を掛けてくれる。
それは自惚れてるだけなのかもしれない。
勢いよく顔を上げて雲雀を見れば不敵に微笑む表情とバッチリ視線が合って苺のように真っ赤になる。
本当に意地悪な人だ。

そう、相手が理想じゃないからこそ求めてしまう。
だからこんなにも離れられないんだ。

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