好きと囁いても君からの返事はなくて

[su_icon icon="icon: warning" background="#9c1423" color="#FFEA65" size="20" shape_size="6" margin="5px 10px 0px 0px" target="self"][/su_icon]骸本体が既に牢から脱獄してボンゴレに加わっている設定

ふわりふわり宙を舞う尻尾のような髪の毛を見つける。
綱吉は戸惑うことなく声をかけた。

「骸!」
「この足音は綱吉君でしたか」
「足音?」
「貴方と出会った頃からの癖ですよ。綱吉君のはあまり聞きなれていないので次は覚えておくようにしましょう」
生きる為の技術を癖とまで言い放つのは悲しいことだが、優しそうに微笑むだけ。
十年後の自分もそんなことまでして、マフィアのボスをしていたのだろうか。
あんなにならないと思っていたのにすごい変わり様だと思う。

「それより用事があったから声をかけたのでしょう?」
「あ!これお前に頼まれてたのだよ」
物を差し出せば「ありがとうございます」とお礼を言う。
受け取ると気になるのかすぐに中身を見る。
「おやおや、こんなに可愛らしくしてくれたのですね……嬉しいですよ」
袋から出せば瓶に飴がギッシリと詰まっていて、まるで駄菓子屋のようだ。
「骸が飴が欲しいなんて意外だな」
「そうですか?切れてしまっていて困っていたんですが……調達してもらえて本当に助かりました」
蓋を開け、1粒口に入れる姿に綱吉の目は釘付けだった。
(骸だけど10年前とはやっぱり違うんだな)

骸が瞼を閉じて大きな息をゆっくりと吐く。
「骸?」
「ああ、すいません。少しぼんやりしてしまいました」
綱吉の頭に手を置き、誰かをあやすような行動はとても不思議な気持ちだ。
見慣れていたはずのオッドアイの眸は“この綱吉”でないものを見ている。
「俺って本当に馬鹿だ」
「綱吉君?」
何も言わず頭の手をどけて歩き出せば骸は追ってこなかった。

【10年後の俺は死んだよ、なんて言える筈がない】