[su_icon icon="icon: exclamation" background="#9c1423" color="#FFEA65" size="20" shape_size="6" margin="15px 10px 5px 0px" target="self"][/su_icon]「戻れるなら戻りたい。君がいたあの頃へ」(+10雲雀×綱吉)続き
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“短期間に強く――”
なんて言ってしまったけれど、ラル・ミルチと修行に入って3日目。
「だあぁああああ~~!!」
毎日ハイパーモードで炎の強化訓練を重ねている。
10年後の綱吉が地下にいても感覚が狂わないように各フロアの明かりは一部を除いて自然光に近いように設定してあった。
γの事件以来は地上に出ることはなく、場所は並盛町なのに外国にいるような気分。
10年前の世界が恋しい気持ちが収まらない。
このアジトは16階構造でやたら大きく設計されていて散歩がてらに出歩くとそれなりに新鮮な気分になる。
(そういえば普通のデパートなんかよりずっと大きいんだっけ)
和んでいる場合ではないことは解っていてもリボーンに気分転換も大事といわれたことを思い出す。
修行を終えて食事の合間や時間がある時はこうして探索――というより散策に出かけている。
エレベーターはグングン下の階を目指すと思いきや、乗った階の直ぐ下でピタリと止まる。
扉が開くと黒いスーツの風紀財団委員長が不機嫌そうに立っていた。
「ヒッ!ヒバリさん!!」
「来るのが遅いと思ったら小動物の沢田綱吉か……」
本人にはそのつもりがなくても綱吉にしてみれば少なからず嫌味に聞こえた。
10年前の雲雀恭弥も苦手だったが10年後の雲雀恭弥はもっと……そう、倍以上は苦手だ。
昔はボンゴレファミリーや守護者に関しても全く興味はないただの戦闘マニア。
そんな雲雀が表向きだけとはいえ、どうして守護者の地位についたのか不思議に思っていた。
「す、すいません。ヒバリさんがこっちのアジトに来てるなんて珍しいですね……」
音も立てず静かにエレベーターに入ってから雲雀はその問いに答える。
「資料室に用事。ボンゴレとは情報を共有しているけれど、流れてこない情報も多いからね」
問いへの返答は会話が続く雰囲気でもなく、恐怖に負けて「なるほど」とは言えない。
予想通りに会話は止まったままエレベーターが降下する音が響く。
横目で雲雀を見るといつもと変わらぬ余裕の表情。
「何見てるの?」
「ヒィィイイ!!見てません!何も見てませんよ!!」
綱吉は顔面で手を必死に振って何も見てないことをアピールするが全くの無意味である。
そんな姿を見て雲雀は本当に10年前の綱吉なのだと思った。
10年前の彼はいつも自分に会うといつもビクビクした表情をしていた。
時間が経てば慣れて警戒しなくなったのか短い会話なら続いた覚えがある。
小動物に恋しているのだと気づいたのもその頃。
二度と会うことはない人物が目の前にいるという高ぶる感情は先ほどより凄い勢いで増す。
「綱吉」
愛おしくて堪らない彼の名前を呼ぶと同時、欲求のままに腕を掴む。
チーン
階に着いたのかエレベーターのベルと扉の開く音が空気と心を振動させる。
「ヒバリさん……オレ、ここの階に用があってこようと思ってて」
「それで?」
思わぬ返答で綱吉はただ唇を噛み、自分には居心地の悪い空気にただ耐えるだけ。
数秒すると再び密室空間へ戻り、エレベーターは降下する。
「――よし……綱吉……」
呼ばれた言葉につい反応して綱吉は顔を上げた瞬間、
「ん……!」
温かい優しいキス。
綱吉にとってはファーストキスだが、それ以上にぼんやり開いたままの瞳は雲雀を捉えたまま。
鋭い牙を向く威圧はなく慈しむ体温。
(何か隠してる、切なそう……?)
エレベーターが止まり表示はB12Fを示す。
重なっていた唇は離れ、腕を引き寄せられればスッポリと胸の中に収まれば強く抱きしめた。
「ヒバリさん?」
不安そうに雲雀に声を掛けるも返答は無い。
(そういえば10年前のヒバリさんともこんなことあったなぁ)
身体は大きくなってもする行動は一緒なんだと感じながら、つい癖で綱吉は雲雀にしがみつく。
お題配布元:Collect