重い。
重い瞳を開けてみる。
始めに見えたのは、光だった。
ゆっくり体を起こすと、周囲では大量の機械が動いている。
「起きたか。名前は言えるか?」
脳みその中で自分の名前を探す。
「クロ、ト……クロト・ブエル」
それが僕の名前。
頭が重くて仕方がないが、唯一友達と呼べる人間を思い出す。
「あれ?オルガは?シャニは?!」
いつも一緒だった彼らの名前を呼ぶ。
「!?――何故、覚えている!」
「オルガは?シャニはどうしたんだよ!?」
「フン。直にあわせてやるさ、こっちだ」
鼻で笑われたことを気にしてなどいられない。
白衣をまとった男の後を追いかけた。
「オルガ!シャニ!」
オルガが僕をギロリと睨む。
「あ?」
「オルガ、どうしたんだよ……」
いつもと違う、敵意を丸出しにされた反応にクロトはつい身構えた。
シャニを見ると、左目を隠す髪の毛は相変わらずだった。
「シャニ……!」
僕はシャニの名前を呼んで、返ってきた言葉。
「何?」
同じ顔、同じ声なのに、返ってくる反応は明らかに別人だった。
入ってきたのは紛れも無くこんな事になった張本人。
「アズラエルさん……」
「どうですか?3人は」
「オルガ・サブナックとシャニ・アンドラスは完了です
クロト・ブエルのみ以前の意識があるようで……γ-グリフェプタンを飲ませれば落ち着くかと」
完了?
以前の意識?
アズラエルさんはオルガに話しかけていた。
「オルガ?」
「あぁ?何だ?」
「オルガは相変わらずですねぇ、シャニ?」
「…………」
シャニは何も言わずアズラエルさんの顔を見た。
「前も無口でしたけど、ますます無口になりましたね……」
そしてアズラエルさんは最後に僕を見る。
「クロト……」
「アズラエルさん、どうして……オルガとシャニは?」
「目の前に居るでしょう?」
「違う!オルガとシャニじゃない!」
自然に僕の瞳は潤んでいた。
「当然です。インプラントを埋め込む時に記憶や性格を改変しているんですから。クロト、君の場合は少し甘かったようですけどね」
「嘘だ……あの時」
二度と泣かないと決めた筈なのに涙が頬を伝い、床に1滴2滴と落ちる。
「あ!そうそう……クロト、以前の記憶があるなら言っておかないとね。変な真似をすると2人の命の保障はないですよ」
「…………」
「コーディネイターを抹殺する為に必要なんですよ。クロト、君の両親や彼らの両親もコーディネイターに殺されたでしょう?」
「それは……憎いよ。でも……」
涙で視界が揺らぎ、床にへたりと座り込む。
アズラエルさんは僕を見下ろして言う。
「僕の言う事を聞いて居ればいいんですよ……」
僕は心に誓う。
いつまでも、彼らと共に生きると。
それが、今まで一緒に居てくれた彼らへの償い。
お題配布元:うそわらい