隣にいて

「C.C.を探しに行ったのさ」

声を聞いた瞬間、心が飛び跳ねた。
予想していた筈なのに心から悔しさが滲み出る。
ギアスを使い、相手の背後に回り込むと驚いた反応をしたがルルーシュの余裕な笑みは消えない。
(やっぱり、兄さんは凄いや……)
「どうした、殺さないのか?」
「……兄さんは、記憶が戻る前も僕を家族として見てなかった?」
その言葉はルルーシュにとっては予想から的外れのもの。
だがロロは続ける。
「僕はナナリーの居るべき場所を奪った憎い偽りの弟かもしれない、でも兄さんは……」

僕の存在を否定するならば

次の瞬間、ロロは拳銃のトリガーに力を込める。
「ロロ、それがお前の本心か?」
「え?」
「記憶のない時はお前は偽りなどありえない本当の弟だ。だが、記憶が戻ってもオレの弟には違いないよ。
オレのことを想っていなければすぐに殺していただろうしな。C.C.を誘き出してやる。オレがお前に今までなかった未来を与えるよ」
ルルーシュは裏があることを隠すようにニコリと優しそうに笑う。
「……うん……」

それを見て頷くロロには解っていた、自分を騙す為の罠のことを。
1年近く記憶を書き換えられたルルーシュと実際に暮らしたことで行動やその時の表情は把握していた。
そのなかった未来を与えてくれるならそれを信じたい。
もしなかったとしても、この想いを抱えたまま偽りの兄を殺すことは出来ないと心が叫んでいた。

昼間の黒の騎士団公開処刑とゼロの騒動が何もなかったことのように、ロロとルルーシュは食事を共にしていた。
「何でオレを助けた?」
「あれは……その、身体が、勝手に……」
「正直、助かったよ……あのまま攻撃を受けていたら怪我じゃ済まなかったな」
本心だった。
騙そうとしていた偽りの弟は思わぬ行動にまで出て自分を助けた。
相手は見事に情に流され作戦に嵌ったわけだが、自分の感じている
この気持ちは一体、何なのかルルーシュは先ほどからずっと考えていた。

「今の兄さんは僕といて嫌?」
「そんなわけないだろう?大事な弟なんだから」
手を握ろうとするとロロは大きな抵抗はしないものの、怯えるように手を少し引っ込める。
ルルーシュは今の行動を見て昔、ブリタニアにいた頃を思い出した。
そして握ったばかりの手をすぐに離す。
「……これからはもっと自分の意思を、本心を見せろ。今までよりずっと仲良くしていくんだからな?」
それはルルーシュが今思った精一杯の偽りなき言葉。
ロロも少し緊張はとけたようで、安堵した。