ルルーシュがハメを外しバベルタワーでのチェス勝負の途中でのテロ。
これが“黒の騎士団”だとロロは解かっていたし、ならあのC.C.と呼ばれる魔女が自ら出向く可能性が高い。
自分を庇い、ルルーシュは下の階層へと落下した。
手を伸ばしても後一歩で届かず偽りの兄が死んだと想像したら背筋が凍る。
ロロは軍に配備されていたナイトメアフレーム「ヴィンセント」に乗り込むとすぐにバベルタワーへと向かった。
C.C.を誘き出し、その餌であるルルーシュを監視するのが自分の任務。
それが段々と偽りの兄に情が移っていったのは今ならハッキリと自覚出来る。
もし、あのC.C.とルルーシュが接触したら能力を必ず取り戻す…。
ギアスを取り戻したら、記憶が戻ったら兄と弟の関係は終わってしまう!
それだけは嫌だった!
今まで向けられる筈のない愛を向けてくれた唯一の人。
もし偽りの弟と知ったら偽りの兄は自分のことをなんと思うか、言うのだろうか。
ナナリーが全てであるあの兄にとって、自分の存在は邪魔であり否定すべき存在へと変わる。
あの姿、あの声でそんなこと聞きたくない。
ヴィンセントは自分の能力を現時点で一番発揮出来るナイトメアフレームだ。
他の人間の体感時間を停止させるギアスなど惜しみなく使う、使った人間は生きて会うことなどないのだから。
そしてバベルタワーで目にしたものは決して認めたくないもの。
「兄さん……やっぱりC.C.と接触したんだね」
兄が大好きだ
本当の血をわけた妹と同等、それ以上に愛してくれた
その関係を壊そうとする魔女が嫌いだった
温かいこの時間を壊す過去の記憶が嫌いだった
その全てを握る自分の持つギアスにさえ嫌気がさした
「兄さんっ……!」
きっとルルーシュは今の軍の排除と自分からの脱出で思考は精一杯だろう。
誰が乗っているかなど解かりはしない。
もし 自分を否定されるくらいなら…――殺してしまおう