誕生日プレゼントを偽りの兄であるルルーシュから貰ってからロロは凍り付いていた感情が溶けていった。
言いたくない言葉が心からすんなり出てくるようになった。
今まで他人に関心など持たなかったが自分でもここまで来ると何かされたのかさえと恐怖に感じる。
だが、接触している限りギアスを取り戻した形跡はない。
ならばこれが本当の自分の感情だとでもいうのか。
生徒会室で書類の整理の手伝いをしている時だった。
シャーリーがルルーシュの隣に座っていつも楽しそうに会話するのは日常だ。
頬をピンク色の染める他の人間が見れば可愛らしい表情を見れば
誰もがルルーシュに恋しているという感情を読み取ることが出来る。
それはロロが生徒会室に来て人目見ただけでわかった。
「――でね、ルル」
「シャーリー、作業が進んでいないんだが?」
横目で見られた書類は必要な文字は書かれておらず、逆にルルーシュの手元の書類は半分が終わっている。
「あ!」
「全く……当分はロロを呼ぶべきじゃないな。シャーリーが甘えるだけだからな」
それを聞いてシャーリーは恥ずかしそうに俯いたが、からかうように偽りの兄は笑う。
ロロは自分を気遣ってくれることを嬉しく思いつつも、言葉は正反対。
「兄さん、あんまりいじめちゃ駄目だよ」
「ロロってばやっさしーー!!」
「シャーリー!オレの弟に甘えるな!」
こんな会話もいつもだった。
仕事が終われはそれぞれ寮へと帰っていく。
通常の生徒とは違い、クラブハウスで生活している2人にとっては登下校は短いもの。
「兄さん、なんでシャーリーさんをいじめるの?」
(相手は好きなのに)
という言葉は決して付け加えない。
「役員なのに自覚が足りなさ過ぎる。ロロにばかり仕事を回しているだろう?」
「でも僕は兄さんの役に立てればそれでいいんだ。けど彼女にだって理由はあると思うけど……」
「たとえばどんな?」
ルルーシュは頭の回転は速く、肉体的なもの以外は殆どの勉学や作戦はこなしてしまう。
それはゼロという仮面を被っていた時の行動が一番いい例だ。
「兄さん、校内ではモテるし…。恋愛感情があるとか?」
ルルーシュはまるでやれやれと言いたそうにロロの顔を見る。
「たとえ誰から好意や恋愛感情を受けようと構わない。
だがそんなものは相手からの一方的なものだ。オレは絶対に手放せない存在が既にいるんだからな」
突然の告白にロロは誕生日の時と同じく心が動揺してクラブハウスへ歩く足を止めてしまう程だった。
「兄さん……そんな人、いたんだ……」
偽りの兄とはいえ、人間なのだから感情があり誰かを好きになるのは自然だ。
「ロロ、どうしたんだ?」
「いや、ううん……」
先程まで元気だった弟を心配してかルルーシュはそっとロロの頭を撫でる。
「ロロだよ、大事な弟だ。大切な弟以上にオレが手放せない人がいると思ったのか?」
始めは誰のことだか解からなかった。
だが偽りの兄が弟と呼ぶのはロロ、自分しかいない。
「ありがとう兄さん。僕も兄さんが大事だよ」
任務だと割り切っていたのにこんなに心を温めてくれる
もう兄だとして見ることは出来なくなるほどに
兄さんは凄く大事だ