ジュース

快晴。
梅雨はあっという間に過ぎて太陽がアスファルトに照りつける。
そんな中、レイジは自転車で遅刻しそうな学校へ急いでいた。

「うおおおお!!」
レイジが自動販売機の前に差し掛かると――
「あ」
見慣れた姿があって、ふいに立ち止まってしまう。

「大空レイジ」
「氷室じゃん!って学校は?」
姿は私服で、学校に向かう気配はない。
「学校は行かない」
「そ、そっか」
会話は続くこともなく、プツリと途切れる。

「はぁ、俺もサボろっかな……」

レイジが呟いた時、既に隣りいた筈の氷室は居なかった。
辺りを見回すと数メートル先を歩いている。

「はや!!おい!ちょっ待てよ氷室!」
レイジも自転車に乗って氷室の後を追いかける。
氷室の隣りに来ると自転車を降りてレイジは言う。

「それより氷室!何、買ったんだよ?」
見ると、手には炭酸飲料が握られている。
「あ!それ飲みたかったやつ!……なぁ、氷室」
氷室は呼ばれたのに気がつきレイジの方を見たが、完全に先を読んでいた。
「それ、ちょっとだけくれ!」
飲めば間接キスになるが、そんなことも気づかず相手は手を合わせて頼んでくる。
缶の中には残り3分の1位。

「なぁ、頼むよ。あ!間接キスの気にしてんのか?」
それも一理ある。
そして氷室は一気に残りの炭酸飲料を飲む。
「あああぁあ!!」
レイジは叫び声を上げた次の瞬間、氷室はレイジを自分の方へ引きよせる。
唇が重なって、少しぬるい炭酸飲料が口に流れ込んでくる。
あまりに突然すぎて、レイジは自転車を離してしまい、耳障りな金属音が聞こえた。

「氷室、おおおお前!!」
「今度は奢ってやる」
氷室は空き缶をレイジの手に持たせた後、先に歩いていく。
「今のって――」
その場には顔を真っ赤にしたレイジ1人だけが残された。