プラントに降り立ったお名前(女)は軍服ではなく、私服だった。エレカへと乗り込みイザークの言うとおりに本家へと向かう。今日は晴れで、光が水に反射してキラキラと輝く。お名前(女)は自分の必要なものも買わないといけないと思い出し、目的地を変更した。2年前の大戦が嘘のような町並み。 まだ戦争は終わっていないというのに、と思ってもその気持ちは誰にも届かない。必要な物だけを持ち、エレカを降りた。
「シャンプー、下着……他は……」
30分後のお名前(女)の両手は荷物で一杯だった。とにかく必要で切れてしまうもの、切れてしまったものを買ったらこの状態。まだ見て回りたいが、この荷物では到底無理だと感じた。1回エレカまで帰らない駄目かと思った瞬間に両手の荷物が軽くなる。
「へ?」
「いつも計画的に動けと言っていなかったか?」
「え、カナード……何でここに?」
「とにかく荷物をどうにかしろ」
「何でここにいるの!?」
お名前(女)は少し乱暴そうにティーカップをソーサーに戻す。荷物をエレカに置いた2人はしかたなく喫茶店に入った。こちらを見る視線が多いのは、乱暴にディーカップを置いたのが理由ではないだろう。カナードの顔立ちは誰もが認めるものだ。お名前(女)もそのうちの1人だが、性格はどうかと思う所もあるがこの状況では関係ない。先ほどはあまりに意外な人物だったものだから、呆然としてしまった。そのこともあり、つい感情的になる。
「色々だ」
そう言ったカナードは町並みと同じように2年前よりは大分落ち着いてるようだった。
「そう……ドレットノートイーターは?」
「預けてある」
まさか誰かに預けるとは思っていなかったお名前(女)はつい、ティーカップを持つ手が止まる。カナードは成長していた。
「……地球に行きたいのだろう?行かせてやってもいいぞ?」
挑発的な笑みを浮かべるカナードにお名前(女)は冷静に返す。
「不法で行くんじゃなくて正式なルートで。その上軍に許可を貰ってじゃないと困るの。私はあの時、そうするって決めたんだから」
「なら、そうすれば良い。俺は俺だ、お名前(女)はお名前(女)だ」
そういうと、カナードはお名前(女)の頭にポンと手を置いて喫茶店を出て言った。あの人なりに励ましてくれているのはわかる。けど、忘れることはできないのだ。キラ・ヤマトのことを。
お名前(女)は代金を払い、喫茶店を後にした。