全てが冷めていた。
身体も心も。
オブライエンがその身を徹して十代の心の闇を封じ込めた。
覇王城から十代を連れ出した後、覇王の勢力は落ち、残ったモンスターが人々を蹴散らしている。
エドも気を利かせてか、亮に十代の見張りと面倒を任せていた。
十代は時折目を覚まし、少し経つと再び眠りにつく。
起きている時、体に触れようとする兆しを見せるとすぐに強張らせた。
以前の明るい笑顔はどこにもなく、口数も少ない。
「十代、何か食べないと身体によくない」
「いい」
「……何にそんなに脅えている」
その言葉に頬からそっと冷や汗が流れた。
「何も」
「そんな風に明らかに動揺されたら、嘘だと言っているようなものだ」
掛けられていた毛布を握ったのが解ると、十代の頬を涙が伝う。
デュエル・アカデミアで行われた卒業模範デュエル以来、泣いた姿は見たことがない。
また跳ね除けられるかもしれない、と、思いながらそっと頭を撫でる。
「たくさんの人を、傷つけて。でも大切なものはまだ何も見つからない……救えない。オレには何も出来ない!」
「この世に、何も出来ないなんてことない。大丈夫だ、今は休め……」
顔を見るとまだ大粒の涙がポロポロと零れていた。
そっと指で涙の跡を拭うと、そっと瞳にキスを落とす。
「冷えた身体と心は、俺が温める」
「十代の調子はどうなんだ?」
偵察から帰ってきたエドは眠りについてる十代を見ながら亮に問う。
「前より良くなってきている」
「随分と引っかかる言い方だな。カイザーを拒否したら、僕が貰うだけさ」
ギロリと亮は睨むが、相手は余裕の笑みを浮かべてた。
(ただでさえ、敵は多いというのに……)