洋館へやって来る覇王軍の兵士を倒しているを倒すにつれて情報も集まった。
覇王が十代は確信へと変わっていた。
エドには「偵察」という名目でアジトの洋館を抜け出した。
カードの効果が実体化する異世界、効果を組み合わせれば覇王城への潜入はあまりにも容易だった。
最上階の屋上へと降り立つと、殺風景過ぎる部屋が広がる。
今の十代の心を表すような――自分の足音だけが響く。
その奥に鎧を脱ぎ、ベッドに身をまかせている覇王十代がいた。
閉じていた瞼がそっと開き、二つの眼で亮をじっと見る。
その瞳は明かりを宿していた。
「何か用か?」
いつも笑顔が絶えず、デュエルを楽しんでいた彼。
そんな彼が亮の支えであり、光だった。
「本当に十代……なのか」
「あぁ、ヘルカイザーがそんな顔するなんてらしくねぇな」
口調や態度が十代と変わらないが、雰囲気が違う。
「……っ! こんな所にいる必要はない、一緒に来い」
冷静を装って亮は十代に言うが、心の中は今と昔の自分が葛藤していた。
「なんで?」
「このようなことをお前は自分の意思でやっているのか? 違うのだろう?」
「わからない。でも、大切なモノを探してる」
異世界からDAを元の世界へ戻したヨハン・アンデルセン……そんなにあの男が大事なのか! 嫉妬の心は無意識に感情として流れ出す。
「そんなにあの男が……ヨハンが大事なのか!」
亮が腕を無理やり掴み立たせても、十代は抵抗すらしない。
「ヨハンも大事だけど、別の大事なモノも探してる。それを見つけない限りはここから離れられない」
虚ろに揺れる瞳を見れず、ぎゅっと亮は自分の腕で包み込む。
「俺では埋められないのか?」
「……ユベルを、探してる」
十代が幼い頃に使用していた最上級ランクの精霊。
全て原因がその精霊にあるのを鮫島校長の話を盗み聞きして知っていた。
「オレもユベルに会いたいし、ユベルもオレに会いたがってる」
「一緒に来てくれ、十代」
「……」
言葉は出てこない。だが無言で十代が何を言いたいのかはすぐに察する。
たった数ヶ月前までは肉体は距離があっても心は傍にあると感じていた。
こうして自分の腕で抱きしめていても、心はあまりに遠い。
素直になって攫っていければどれだけ幸せなのだろう。