「後は任せたぞ、在校生」
「おう任せろ! 卒業生!」
それが自分から言える精一杯の強がりだ。
この島でデュエルすることは二度とないだろう。
そう思ったら、急に切なくなってしまった。
「十代くん!!」
「え?!」
何処かで聞いたことのある声――主は観客席におり、十代にとっては見慣れた二人がそこにはいた。
「遊戯さん!!」
会場の拍手はピタリと止み、視線は武藤遊戯に注がれる。
身長差があって気づかなかったが、隣にいるのは見間違いではなければ海馬瀬人だ。
(デュエルキングの武藤遊戯がなんでこんな所に?!)
鮫島校長が頭を下げたのを見た生徒たちは、口々に話を始める。
デュエルキング・武藤遊戯、KC社長のデュエル・アカデミアオーナーである海馬瀬人がまさか生で見れるとは誰も思っていなかっただろう。
この学校創設以来、オーナーが入学式や卒業式はおろか卒業模範デュエルにオーナー直々に来たことは一度もない。
「海馬さんもお久しぶりです!」
「十代くん、成長したね! ね!海馬くん」
「フン やはり貴様には頭脳戦は向いてはいない」
十代は海馬の意見には不満があるようで、少し頬を膨らませる。
「海馬くんってば……。海馬くん、十代くんのことすごく心配してたんだよ? あまり連絡も寄こさないからさ」
「!?」
そう言った遊戯を、海馬は無言で睨むが、意味はなかった。
「カイザー、紹介するよ!興味あるって言ってただろ?」
「十代くんがデュエルしてみたい相手って、彼?」
「そうですよ」
先ほどまで自分とデュエルしていたとは思えない嬉しそうな笑顔。
「デュエル・アカデミアへ進学を勧めてくれたのが海馬さんで、デュエルの師匠が遊戯さん」
進学を勧めたのが海馬瀬人なら一生勝てない言わせたのも納得した。
十代の引きの強さ、発想は武藤遊戯あってこそなのだろう。
軽いやり取りをした後、遊戯は海馬の背中を押して会場の外へと出て行く。
「カイザー。いつもの所で待ってる」
それだけ言うと十代は何も言わずに会場を2人を追うように後にした。