「このデュエル、おもしれぇよ!」
「君のデュエルに敬意を表する」
サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃が決まり、十代のLPは0となった。
荒い方法とはいえ、翔も少しは何か解ってくれただろうか?
「まさか、本当にデュエル・アカデミアへ来るとはな」
「またって言っただろ?」
明日香と翔は何事だと、互いの顔を見合わせた。
「あの時、カイザー呼んだな。何故俺を知っていた?」
「卒業後の進路にデュエル・アカデミアを勧められたけど……一度は断ったんだよ。でもアンタを見て、実際にデュエルしてみたいって思った」
「君とは積もる話があるようだ」
一言だけ残し、亮と明日香は灯台を離れた。
十代は寮にほど近い、森の中で空を眺めていた。
昨日の夜に行ったデュエルを思い出すとワクワクする、胸が高鳴る。
どうやら強い決闘者は三体融合するのがお決まりなのだろうか?
海馬瀬人もブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンを融合させる。
一方でデュエルキングの武藤遊戯は放浪の旅に出て、当時使っていたデッキはこのデュエル・アカデミアに展示されている。
たまに一時帰国した時に何度かデュエルする機会はあるが勝てない。十代にとってデュエルキングは武藤遊戯なのだ。
「あ、カイザー!」
学校から寮へと歩いていく亮を見かけ、大きく手を振った。
木の根元に寄りかかってる十代に亮が近づく。
「何してるんだ、遊城十代」
「空見てたんだよ! カイザーとのデュエルのこと思い出しながら。にしても早いな、帰ってくるの」
学校の方を見ながら十代は不思議そうに言う。
「最後の授業は自習だったから早めに帰ってきただけだ。君は明らかに、出席していないな……」
「あはは! たまにはいいんだよ」
太陽のような笑顔が、あの冬を出会いを思い出させる。
何かを取り出しながら「悪い」と、突然の謝罪されたと思ったら、電話のようだ。
画面を見ると、慌てて姿勢を正すものだから笑ってしまう。
「お久しぶりです! うん、元気ですよ…………やっぱり来て良かったです。今、人がいるので――はい、後日連絡しますね」
その口調は、いつもの彼からは思いもつかない態度で、亮は目を丸くした。
(電話の相手はそんなに目上の人間なのか)
その複雑の想いに亮は目を伏せた。
「悪かったな、カイザー!」
「電話の相手……」
「え?」
亮は言葉に出してから、口を閉ざす。
「電話? 今の? デュエル・アカデミアの進学を進めてくれた人だよ。この人には一生掛かっても勝てる気がしないな」
「君がそれ程に認める相手か……興味あるな」
興味があるのは本当だ。
遊城十代のことが気になって仕方ないのだから。
「すっげぇ強いんだぜ? その人がカイザーのデュエルを見せてくれたんだ。あの時、偶然会ってデュエルしてみたいって思った」
冬とは違って温かい風が辺りを包み、燦々と降り注ぐ日差しが十代を明るく見せた。
「よし! オレは寮に帰って夕飯まで寝るぜ、またなカイザー!」
亮はオシリス・レッドの寮へ帰っていく十代をその場で見送る。
君が認めるのは俺だけにして欲しいなんて 我が儘だろうか