小話

抜け駆けした後

エスコート ヴァイエイトの運命は

「ヴァイエイト…………どういうことだ?」
怒りのこもりにこもった声が部屋に響く。
「……と、いいますと?」
「ほう、ここでそれを言うか……」
トールギスの後ろで主を応援するようにメリクリウスの「そうだそうだ!」という声。
それを気にせず、トールギスは愛用の剣をヴァイエイトへと刺さる一歩手前まで、突きつける。
「殺されたいのか?」
「…………」
「まぁ、今回は見逃してやろう。――二度は無いと思え」
トールギスの怒りは収まり、剣を下ろす。
しかし、その行動を見て、メリクリウスはチッと舌打ちをする。
それを聞いてトールギスは、思い出したようにヴァイエイトに言う。
「……だが、仕事の量は増やす」
ぽつりと言った声だが、2人には確かに聞こえていた。
メリクリウスは瞳を輝かせトールギスを見た。

続 抜け駆けした後

[一緒にお出かけ] 散歩に出かけた後に起こしたメリクリウスの行動とは

「聞いているのか、メリクリウス……」
怒り交じりの表情でトールギスは問う。
今日に限って、メリクリウスがあまりにデレデレした表情だったからだ。
「何かあったのでしょうか?」
「知るか……」
トールギスは頭を抱えるようにして、吐く。
「もお、トールギス様、聞いてくださいよー!」
「なんだ!! 仕事が終わってから耳が腐るほど、聞いてやる!!」
机を勢い良く、叩きながら言ったが、次の言葉で耳を疑う。
「昨日、シュウト君と一緒に出かけたんですけどね!
それだけでにっこりって笑ってくれたんですよ?
その上に抱っこ出来たなんて、俺って幸せ者ですよね……はぁ……。
もう、シュウト君はオレの姫君ですよ……でもトールギス様に言ったら殺されるな!」
その後、誰も口を開かない。
それを破ったのはヴァイエイトだった。
彼は目つきが一層、鋭くしながら、トールギスを見ながら言う。
「…………今の聞きましたか?我が主」
「ああ、よぉく聞こえた……。手始めに、城中の廊下を雑巾がけでもしてもらおうか……」

あの2組とD様の行方

心の奥] 引っ張られていった彼らがあの方に対して行った行動に関して

「何するんですか!手を離しなさい!」
デスサイズの丁重な言葉使いでも、明らかに怒っているとわかる。
「離してくれって言って、誰が離すんだよ……」
「確かにそうですね」
カ廊下には足音が響き嵐の騎士の腹心2人に、その後ろからモゾモゾと動く黒い物体。
あまりに不気味すぎる。
「一体、何処まで連れて行く気なんですか……」
「そんなもの、宇宙の果てとでも言いたい所ですが……無理ですね」
即座に返したヴァイエイトの言葉が痛い。
そう言っている間に、彼らにとっては宇宙の果てに当たる場所に着く。
メリクリウスは足でドアを蹴り開けて、ヴァイエイトとデスサイズもその部屋へと入る。
そして、メリクリウスはその部屋にある、ロープで首から足までぐるぐるに巻く。
その後に何やら呪文を唱え、手を離す。
後ろでは、ヴァイエイトが一体、何処から出したのかわからない布で、デスサイズの口を封じた。
こちらも、呪文を唱えてから手を離してから、言う。
「デスサイズ様、ご安心ください。布は綺麗なものですからね?」
「力はそっちの方が上なんて事は分かりきってるからな……――なら古風な手を使うまでよ!」
古風と自分で認めるとは馬鹿以外の何者でも無いと、デスサイズは心で突っ込む。
「んじゃあ、誰かに見付かるまで、頑張ってくれや!」
「手を出したのですから、自業自得ですね」
そして物置のドアは閉められた。

秘密の話

[Panic×2 Hell] シュウトを部屋の外に出した後の会話

シュウトが部屋を後にしたのを確認すると、トールギスはギロリとデスサイズを睨む。
「……どうしたら、惚れ薬を被るだろうな?」
「何を仰りたいのですか?」
「貴様が無理やりやったのではないか、だ」
野球のストライクのように、言いたい事をドンと言ったトールギス。
デスサイズは呆れたように返す。
「ですから、トールギス様……事故でございます」
「まぁいい」
そこで、トールギスは一息付く。
「――いいか、 シュウトには手を出すなよ!?出したら、その場で首が飛ぶことになるぞ……」
「……はい、我が主」
デスサイズが後からこの時を振り返ると、まるで子供が必死に
自分の物を取り上げられないように駄々をこねているような、そんな感じだった。

デスサイズとデート

[Panic×2 Hell] デスサイズに惚れたシュウトとのデート風景

「何度歩いても、この城って広いよね……」
「そうですね。外からはあまりそうは見えませんが……
トールギス様も全ての部屋は把握しきれていません……。
私も、城に出入りしてずいぶんと経ちますが、わからない場所も少なくありません」
「出入り……って、デスサイズ、偉い人だったの?」
「……偉い、どうでしょうか?ですが、あの翼の騎士とも何度も顔は逢わせています」
「やっぱり、偉い人だったんだ……っと、うわ!!」
「大丈夫ですか?」
「うん!ありがとう、デスサイズ」

続・デスサイズとデート

[Panic×2 Hell] デスサイズに惚れたシュウトとのデート風景

「シュウト君は知らないでしょう?王家に伝わる伝説をお話しましょうか……」
デスサイズは魔法で本棚から1冊本を取り出し、そして本が勝手に捲られ始める。
「えーと……何て書いてあるの?」
「お読みいたしましょう」
デスサイズはシュウトの後ろに移動し、そっと抱きしめるような形を取り、読み始める。
ページにはラクロアの文字とその伝説に関係する禍々しき剣が描かれていた。
「……そして王族は魔剣エピオンを封印した……」
「その、魔剣エピオンって本当にあるの?」
「ええ。事実存在します。魔剣を握れば力に溺れ、敵味方関係なく力として吸収するのでしょう」
そう言ったデスサイズの表情はシュウトからは見えない。
だが、やけに冷めた瞳で表情1つ変えずに言う。
「伝説上はそうなんだろうけれど……でも、封印だなんて……。
きっとエピオンがそうなっちゃったのも理由があると思うのに……」
「……貴方は優しいのですね……」