祈るだけでは叶わない 

焚き火が消えないように、薪を投げ入れる。
夜までに次の村には間に合わないと判断し、今日は野宿だ。

向かっている先は、パーティーメンバーの転職ギルド。
この数ヶ月、冒険に明け暮れたおかげで、レベルは上がった。
僕のジョブレベルも48で……いつでも転職できる。

ある日、転職したらバラバラになってしまうのではないか。
そんな不安に襲われて以来、プロンテラから足を遠ざけていた。
大事にしている聖書にもある――「救いを求める者を助けたければ、立ち止まっている暇などない」と。

「アンタ、また読んでたの?」
両手一杯に抱えた蒔を焚き火の近くに置くと、僕の隣に座る。
「ええ。神に仕える身、聖書は大事な物です」
「ふーん……」
興味なさそうな返事をすると、弄っていた薪を投げ入れた。

「君は、いつ転職するの?」
「まぁ近いうちには。もっと強くなって色んな所行きたいし!」
その途端、胸がドクンと高鳴って、自分自身でもビックリした。
「そうですね……」
適当な相づちをするしか、今の僕にはできなかった。

「アンタだけだよね、パーティーで自分の転職のこと口にしないの」
「僕だって、もっとより良い支援できるようになりたいと思ってます」
「そっか。馬鹿なこと考えてるのかと思った!」
「馬鹿なこと?」
「うん。離ればなれなっちゃうんじゃないか、とかさ」
潤んだ瞳を隠すために、咄嗟に聖書を開く。
すると頬を伝って落ちた涙が文字を滲ませた。

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お題配布元:Lump

2011/01/28
2011/09/11脱字修正

吹っ飛ばされるノビ可愛い!男前の剣士まじかっこええ!