狂気の海に引きずり込んで

地球の約70%を占める海。

クロトはデッキから海を見下ろしていた。
太陽が海に照りつけて水中で泳ぐ魚が見える。

「あ!オルガ……」

足音がしてと思い、ふと振り返るとそこにいたのはオルガだった。

「こんな所で何やってんだよ」

「別に……」

オルガに問われてクロトは、再び海に目を移して答えた。

「大体、こんな所にいて暑くねーのかよ……」

「そんなに暑くないんじゃない?」

オルガの顔には汗が伝う。
確かに太陽が照っているのだから暑いと感じる人もいるかもしれない。

「ねぇ、オルガ」

オルガは名前を呼ばれたのでクロトを見るが、クロトの目線は海のまま。

「僕らって海から生まれたって本当?」

「さぁな。そんな事、実際に見たわけじゃねーから知らねーよ」

オルガは記憶を辿る。
以前で本で読んだのを覚えている。

生命の源は海、だと。

「ふぅん……僕らが死んだら海に還れるの?」

「それって、死ぬ気って事か?」

「違う。もし、死んだらって事だよ。MSに乗ってんだから何時死んだって仕方ないだろ?」

オルガはクロトの頭に手をおく。
それでもクロトの目線の先は海のまま。

「誰でも死ねば海なり星なり帰れる」

オルガはそれ以上何も言わなかった。
クロトが誰に言う訳でもなく言う。

「ヴァーカ」

お題配布元:Seventh Heaven