死ぬということは全てからの脱却

「そういえばさ……クロトって何でそんなに拳銃にこだわるの?」

「そういえば……」
オルガも口に野菜を運びつつクロトに聞く。
「……え?」
クロトは何て答えたらいいのか検討も付かない。
そして悩みに悩んで出た言葉。
「僕が初めて人を殺したのが拳銃だから、かな?」
クロトの顔は笑っていた。
寂しそうな笑顔の裏に滲む狂気があることを、2人は知っている。

「あぁ、だからか」
オルガは納得したらしい。
まだ身寄りが無かった頃、自分を守る為にトリガーを引いた。
「……そういう2人はどうなんだよ!」
クロトは少し怒った顔をして聞き返した。

「俺も銃だよ」
そう答えたのはシャニだった。
「んじゃあ、オルガは?」
「素手」
その場に居た人間が固まった。
クロトは腹を押さえながら笑い、シャニは再び食事に戻る。
「ははははは!素手!?でもオルガならやりそうだよなーっ!!」
「あ?それだけ筋肉が付いてるって事だろーが!」
「え?筋肉馬鹿なんじゃないの?」
「クロト、テメェ……!子供みたいにゲームばっか、ピコピコやってるよりはマシだ」
「……オルガ!!」
2人の怒りはピークに達する。
と次の瞬間、大きな音がすると2人の間を何かすり抜ける。
そして壁からは小さな穴が開き、煙が出ていた。
鼻につく、特有の火薬の香り。
オルガとクロトは飛んできたほうを見る。
「――シャニ?」
シャニが手に拳銃を持っていた。
その拳銃のトリガーは引かれていて。
さっき飛んで行って、壁の穴の正体はシャニが拳銃を撃ったからだろう。
「シャニ、危ねーだろうが!!」
「撃つなら撃つって言えよな!」
「……ウザイ」
シャニの一言。
それでこの場は収まった。
それから2人の中ではシャニを怒らせないようになったとか。

お題配布元:sein