この感情に名前を下さい

「γ-グリフェプタン。これからはこの薬を飲んでもらいますよ」
そうあいつから言われて飲んだ薬だった。

クロトはゲームの液晶画面から目を離し、時計を見る。
時間は10時、7時前後に薬を飲んだからもうじき切れる筈だ。
クロトは仕方なく、机の上に置いてあった薬を手に取ろうとが――。
手を止めて、クロトはベットに横になった。
味は特に問題は無い。
成分の事を説明されてもイマイチよく分からないから自分には関係ない様なものだ。
それでもこの薬1本飲まないだけで自分の運命が変わる。
それが嫌だ。

“何処へ逃げても無駄ですよ。結局、君が帰る所は此処しか無いんですから”

あまりに辛くて逃げた時に、そういわれた。
「はぁ……」
クロトのため息だけが部屋に響く。

急にドアが開き、ベットに横になったままクロトは部屋に入ってきた人物を見る。
金髪にオールバック、オルガだ。
「クロト、アズラエルが呼んでたぜ」
「……行かない」
「とにかく、行けよ」
オルガがめんどくさそうに言った。
仕方なく、クロトが横になっているベットに座る。
「行かないと薬、抜かれるぜ?あんだけ苦しい思いするんだから行って来いって」
「嫌だ」
クロトは即座に返事を返す。
オルガは1つため息を付いてクロトの顔を見る。
「クロト……」
瞳からは涙が流れていた。
「お前……薬、飲みたくないんだな?」
クロトは何も言わずコクリと頷く。
それを見てオルガは続ける。
「確かに俺も飲みたくねーよ、こんな物。俺だけじゃない。シャニだって同じだ。
でも、俺達はこれを飲んでいくしかないってのは分かってんだろ?
……薬を飲まないで後で苦しいのはお前自身だ。とにかく飲め」
しかしクロトは決して頷かない。
しかたなくオルガはその薬を自分の口に当てて、飲んだ。

「それっ……僕の!」
クロトが言葉が届く前に、薬の入っていた瓶は床に転がっていた。
そしてオルガがクロトを自分の方に引き寄せ、唇に自分の唇をあてる。
薬をクロトに飲ませた事を確認するとそっと唇を離す。
「オル、ガ……」
「これで飲めただろ?とにかくアズラエルの所には行ってこい」
そう行ってオルガはクロトの部屋を出て行った。

「今のって――」
クロトは顔を真っ赤に染める。
「?――でも男同士ではしないんじゃなかったっけ……」
ふとそんな事を思いながら手で涙を拭う。
そしてクロトも部屋から出て行った。

お題配布元:sein