くだらないくらだない、本当にくだらない!
あの子以外のことなんて全てくだらない。
この言葉を何度繰り返したのだろう。
ゴン!と鈍い響きがすればディーノが痛そうに頬を手で押さえる。
「そっちにあっても僕にはないよ」
「そう言わずに――な?」
フレンドリーに言われても気持ち悪いだけ、とは口にしなかった。
沢田綱吉が消えて既に1週間以上経つ。
リング争奪戦の時にもやってきた跳ね馬のディーノという男がまたノコノコ現れた。
ヤツなら消息不明の綱吉を知っているだろうと思ったが多くは語らない。
綱吉が深く関わっているからこそ、ディーノに用事はないのだ。
知りたいのはあの子が今何処で何をしているのか。
事情を知っているのに語らない人間を相手にするのが苦痛で仕方が無い。
「それよりさっさと僕の質問に答えてくれる?」
「ツナのことか」
ディーノはそう呟いただけでそれ以上はやはり何も言わなかった。
学ランを羽織ったまま不良を噛み殺しても当然気持ちは晴れない。
トンファーで殴れば鈍い音が鳴り、相手の返り血が頬に付着すると気持ち悪くて拭う。
「あんなに噛み殺しても足りない」
綱吉の血なら喜んで舐め取ったかもしれない。
帰ってきたらそれもいいかもしれない、勝手にどこかに行ったお仕置きとして。
学校に戻り現実逃避という名の昼寝のために屋上に近づけば聞こえる「ヒバリさん」という幻聴。
心地良いと感じるのは綱吉だけ。
ディーノに名前を呼ばれる時はムカつきを通り越して吐き気さえした。
出さないが相当参っているらしい。寝転ぶ直前、ヒバードが空高く舞い上がるのが見えた。
騒音がして目を覚ますと異変に気づいた。
あの屋上の、並盛の空気ではない。
「ふぁ~あ…さわがしいなぁ……君……誰?僕の眠りを妨げるとどうなるか知ってるかい?」
体を起こせば広がる見慣れぬ風景に、不思議と嬉しさが止まらなかった。
これはあの跳ね馬に感謝するべきなのかもしれない。
明らかに相手が動揺しているのはどうでもいい。
僕はあの子が何処にいるか知りたいだけだから