校庭 廊下 教室 屋上 中庭――とにかくあの小動物は目につく。
書類と睨めっこを止めて鉛筆を投げれば椅子から立って校庭で行っている体育の授業を見つめた。
どことなく見ているつもりなのにピンポイントであの小動物に視線がいく。
マラソンのようで苦しそうな顔をしながら座り込んでいる。
そこへいつもの2人組みの他に笹川良平の妹が声を掛けているのが見えて笑い返しているのにイラッする。
このキモチを自覚したのは記憶に新しい。
放課後の廊下で親しそうに(実際に親しいが)あの忠犬と小動物が歩いているのを見て
思わず後ろからトンファーで殴りつけようとした時だ。
群れているのが嫌いなのが1番の理由だが、群れている人間など学校のそこら中にいる。
何故だと彼だけと疑問に思い、答えは直ぐに出た。
(まさかこの僕がね)
どんな方法で近づこうかなんて女々しいことを考えている。
全校放送で呼び出してしまおうか?でも恐がらせては意味がない。
「沢田綱吉……綱吉……――」
自分を気持ち悪いと思う日が来るとは思ってもいなかった。
嗚呼、馬鹿馬鹿しい。
「そう、僕が支配者だ」
この学校の、並盛町の、そして小動物の。
咎める者はいない。今から自分らしく攻めさせてもらおう。
汗を拭うとベタついた気持ち悪さが襲う。
「にしても、大丈夫かよツナ」
「あはは……なんとか……」
体育の教師にダメツナだと言われたことがキッカケだった。
それを聞いたこの右腕が黙っているはずもなく、とぱっちりが飛び火して校庭10周など。
もちろん獄寺も一緒に走ったし、トレーニングだと山本も混じって3人で走った。
「本当にすいませんでした!!」
「いや、獄寺くんのせいじゃないって!……」
思いっきり頭を下げる獄寺を宥めると嬉しそうに涙を浮かべる。
大げさな表現と言ってしまえばそれまでだが、彼にとっては自分の行動1つがとてつもない威力なのだ。
「10代目!どうかしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ」
校庭から見える応接室の窓。
時折、部屋の主である雲雀恭弥が窓から何かを眺めているのを綱吉は知っていた。
(珍しく居ないんだ……)
まだお互いのキモチには気づかぬまま