君じゃなきゃダメな理由

「Only you my Lover」続き、時間経過はちゃめちゃ

(((さ、、寒いっ……)))

時間は完全に日が沈んだ夕刻で、街灯やイルミネーションが点灯し始めていた。
もう少しで12月も終わり、冬休みへと入ることであまり会えなくなるのかな?と疑問に思いながら黙々と書類を片付ける雲雀を見る。
年末年始、風紀委員会は忙しいようで11月には既に準備を始めているようで……。
トン、という軽い音で綱吉の思考は現実に引き戻された。

「遅くなってごめんね。今終わったよ」
「ああ、お疲れ様です」
雲雀は詰まれた書類をあっという間に片付けて整理してから席を立つ。
綱吉の手を握りながら頬をそっと触る。
「冷たい」
「平気ですよ」
応接室には特別に冷暖房設備があるのだがこの時期と時間帯になると、それでも肌寒さが残る。
加えて離れてる上に窓際で寒さが身に凍みるのは承知していた。
意外にも雲雀が心配性なのを知っている綱吉は自分から話を切り出す。
「ヒバリさん、帰りましょう?」
「そうだね。送るよ」
ずっと自分の熱を分け与えるように手を握り続けたまま。
ありがとうございます、いつものことだが綱吉は嬉しそうに微笑んだ。

今日“も”愛車ではないようで疑問を持ちながら帰路へつく。
そんな考えを雲雀からしてみればお見通しのようで
「バイクだとすぐに着いてしまうから。綱吉と一緒にいられる時間が少ないでしょ」
と答えられ嬉しさと羞恥心とで俯くだけだった。

「――もう少しで今年も終わりですね」
「それで?」
「え、それでって……。何かあっという間だったから寂しいなって」
雲雀は横目で確認すると本当に寂しそうな表情で。
頬と耳が寒さから程よくピンク色に染まっているのを見て視線を逸らす。
頭を撫でれば、雰囲気で彼が嬉しそうなんだということが手に取るようにわかるのは惚れ込んでいるからだろうか。
「君は来年もあの忠犬と野球馬鹿とは一緒だろう?」
「そうですけど……」
モジモジしながら上目遣いでこちらを見れば綱吉が何を言いたいか察する。
「僕は卒業しないよ、ずっと並中生。でも君が卒業するなら一緒に卒業してもいいかもね」
安堵の表情を浮かべながら吐き出した息が白く宙へ消える。
自然と繋ぎあった手は少し冷たくても相手の存在を確かめるには充分過ぎた。

(一緒に居られることがこんなに嬉しいなんて知らなかったな……)
手を繋いだまま道を歩いて、家に近くなると雲雀が言う。
「もう少しで結婚記念日だね、買い物でも行くかい?」
「い、いいんですか?!」
一瞬歩みを止めてしまうほどに驚いたが、ここで止まったら逆に雲雀にまた思考を読まれることになる。
「絶対に行きますっ!」
親と遊ぶ約束をしたはしゃぐ子供のような姿を見て無意識に繋ぐ手に力を込める。
「何を買おうか考えておいて。我が儘、たくさん言っていいからね」
「はい!ヒバリさんありがとうございます」
お礼の言葉があまりに雑音が混じらず心に響いて雲雀は微笑まずにはいられなかった。