冬休みが終わり、始業式の朝。
「ヒバリさん、本当に結婚するとか言ってたけど本当にするのかな……」
左の薬指につけられた指輪を見ながら考える。
その雲雀はというと朝に向かえに来る訳もなく、ツナは獄寺と山本と登校している。
学校の校門には、チェックという訳ではないのに自分を待っていたように雲雀がいた。
「綱吉」
「おはようございます、ヒバリさん」
「それじゃ、行くよ」
手を捕まれて、言われるがままにツナは雲雀についていった。
「………………」
「まぁまぁ、獄寺……今日は何かあるんだろ」
山本は獄寺に、にこやかに答える。
連れてこられた先は、応接室だった。
そこには、先日自分が選んだ白いドレス。
「あ……」
借りたのか、買ったのかわからない。
着るのも恥ずかしい。
けれど、自分の為にしてくれたのが嬉しくてたまらなかった。
「さすがに1人で着替えるのは難しいからね、風紀委員に頼んでおいたよ」
雲雀が言うと、部屋にいた風紀委員と思われる人がお辞儀をする。
それを見て、ついついツナもお辞儀を返す。
「まかせておいてください!」
「それじゃ、よろしくね」
雲雀は他に用事があるのかすぐに部屋を出て行ってしまった。
「それでは綱吉様、着替えしましょう」
「はい……」
それから数十分は苦痛でしょうがなかった。
ウェディングドレスを着た後は、髪の毛にヴェールをつけらたのだが
それがあまりにも慣れてない感覚の為、ムズムズして仕方がない。
決め手は履かされた靴。
明らかに女物で、ヒールが差ほど高くはないもの、違和感がありすぎる。
始業式があり、1時間目の授業が終了する15分前まで応接室に待たされた。
風紀委員は時間を確認するとツナに告げる。
「委員長は屋上におられます」
「あ、はい!ありがとうございました……」
軽くお辞儀をして応接室を出ようとする。
「綱吉様、とてもお似合いですよ……委員長をお願いします」
(部下に慕われてるんだな)
「ありがとう」
***
わざわざ人目につかないように時間をずらしたのだろうか?
始業式で教室と廊下には誰もいなかった。
コツコツと少し早足で歩くヒールの音だけが廊下に響く。
屋上へ続く階段を上り、ドアを開けようとするとドキドキした。
(冷静になれ)
そう言い聞かせでから、ドアを開ける。
少し冷たい風が吹いて肌をひんやりとなぞる。
こちらは向いてないが、学ランをまとった雲雀が確かにいた。
恐る恐る雲雀の方へ少しずつ近づく。
やっと、雲雀はツナの方を向くと風にかき消されそうな声で言う。
「……綱吉、とっても綺麗だよ」
「ありがとうございます……」
恥ずかしくてお礼を言いながらツナは俯く。
胸元には花のコサージュが飾られ、それに揃って頭にも花が飾られてヴェールが流れる。
スカートの部分はふんわりとしたレースが重ねられているプリンセスドレス。
だが、肩が丸出しなだけあり冬の外には少し堪える。
「ずっとこの時間だけが止まっていればいいのに……あまりにも君が可愛いからだよ」
そう言いながら羽織っていた学ランをツナへと羽織らせる。
「寒かったね」
雲雀はポケットから小さな箱を取り出すと、ツナの左手を取る。
婚約指輪を外すと、銀色に輝く新たな指輪をはめた。
その光景はツナにはあまりにも刺激的で、心臓がバクバク言う。
「あ、指輪……返してください」
「いいよ」
するとツナは結婚指輪の上に、重ねるようにして婚約指輪をはめる。
「オレにとっては、どっちも大切な指輪です・・・・」
ツナは箱に入ったもう1つの指輪を見る。
「ヒバリさんも左手、出してください」
指輪を手にとって、ツナは雲雀の薬指へと指輪をはめた。
「これで、ヒバリさんはオレのものでオレはヒバリさんのものです」
顔はこの気候に反して、真っ赤だろう。
その言葉を言う唇が震えていたのが自分でもわかった。
「嬉しいよ、綱吉」
ぎゅっと抱きしめてきた雲雀をツナは抱きしめ返す。
ツナの耳元で息がかかりそうな位な位置で雲雀が囁く。
「ずっと一緒にいよう、一生幸せにする……君がマフィアのボスになろうと」
「はいっ」
この人は 自分がどんな道へ行っても隣にいてくれる
嬉しくて涙がぼろぼろと溢れる。
頬に手を添えられて、お互いの唇が重なった。
君の愛は僕だけのモノ