04 僕はそんな君の後姿を見つめているだけ

慌てた顔をするディーノたちを尻目に話は続く。
「笑えない冗談だね」
ぶすっとした表情は未来にいる恋人の雲雀恭弥と何も変わらない。
「会いに行ってもらえませんか?淋しがってると思うんです」
「あの子が戻ってくればいいだろう。そうしたら、僕が鳴き死ぬまで可愛がってあげるよ」
「オレを倒さないと戻って来れない、としたら?」
次の瞬間、左側から気配を察知して少し身体を向けて避けた。
「ワオ、避けたね!――なら、僕が噛み殺すだけ」

お互い間合いを取り、飛んでくるトンファーを上手く受け流す。
その行動が勘に触った雲雀は咄嗟に攻撃を止めて言う。
「本気、だしたら?」
先程まであった余裕は消え去り、鋭い殺気を放つ。
無言のまま綱吉はトレードマークの27と描かれた手袋をはめると額の死ぬ気の炎を灯す。
「あの子と同じことをするんだね」
近づいてきた雲雀の行動は、今の綱吉には読めていた。
両手で上手くトンファーを掴み、押し返したら相手は驚いたようで。
「オレが知る10年後の雲雀恭弥には到底及ばないな」
短く息を吐き出せばグローブはただの手袋に戻り、死ぬ気の炎も消える。
そして屋上からアジトへ帰るために階段を下りようとする。
「逃げるんだ?」
「……リングに炎を灯せるようになったら、また相手しますね」
きっとイライラで凄い顔をしているのだろう、と綱吉は簡単に想像出来た。
(ディーノさんごめんなさい……)
胸のうちで思っても今更遅かった。

ディーノが声をかけても、うるさいと一言で片付ける。
雲雀は右手の中指に嵌るボンゴレリングを見つめながら
(ああ、イライラする!!噛み殺したい)
そう、思った。
一瞬にして、リングから紫色の淡い揺らめきが広がる。
今朝からのことを手当たり次第に思い出すほど、炎は大きくなる。
極めつけはあの男だ。
「おいおい……恭弥が次にツナに会った時が恐いぜ」
そう誰に言ったわけでもないディーノの呟きは部下数人が聞いてただけ。
とんでもない事をした彼も、見事に乗せられた彼も、今は形振り構っていられないのだ。