02 朝焼けへの咆哮

冬を感じさせる冷たい風が吹けば学ランが靡く。
先程まで早朝狩りと称して町内の不良全てを叩き終れば、太陽が眩しかった。

あの子が消えて3日が経った。
今の雲雀の脳内は、それだけ、だった。
1日目は「何かあった?」そんな程度だった。
翌日調べさせれば赤ん坊と群れている雑食動物共々行方不明と報告された。
沢田綱吉と正式に付き合っているわけではない。
応接室に呼んで話しをしたりお茶をしたり、先輩後輩や友達とも違う。

校門を潜り、誰より早く学校に来れば溜まった書類を片付ける為に応接室へ向かう。
扉を閉めればひんやりとした空気が肌に触れる。
(そう、数日前までは笑っていたあの子がここにいたのに……)
窓から目に突き刺さる程オレンジ色に染まった太陽を見れば
「綱吉、……」
自然と名前が零れた。

同時刻、応接室から丁度死角になる部分に綱吉はいた。
表向きは散歩・周辺警戒と言ったが、あの様子では外出理由など把握されていただろう。
だが獄寺は危険だ、と言いつつも送り出してくれて感謝している。
それを見ていたリボーンも淹れたてのコーヒーを飲みながら、さっさと行けと目線を送ってきた。
(会ったって)
真実を認めるだろうか?
お互い意識をしていても、まだ正式に付き合っているわけではないこの時代の2人。
再び歩き出せば嫌気が差す程の朝日が目に入る。
「ああ」
そういえば雲雀とこんな朝を迎えたこともあったな、とぼんやりと思い出す。
「……ヒバリさん、信じてますから……」
これは10年後の恋人への言葉。
自然と表情がゆるくなって、微笑んでしまう。
時計を見ればもう朝の6時近い。
今日からはもっと忙しくなるだろう、あの雲雀へまた家庭教師が付くのだから。