息を吐いて吸う――煙草と一緒にこの星の空気が流れ込む。
彼のことを考えれば自然とため息になる。
「眠くなった」と言って雲雀と別れたのが30分ほど前。
そわそわして落ち着かなくて、ボンゴレアジトに隣接して作られている風紀財団のアジトへ遊園地のお化け屋敷に初めて入る子供のような顔で押しかけた。
草壁は笑顔で部屋に通してくれたが、いざ雲雀を見ると身体が強張った。
何故か自分の中で音を立てないように近づくと
「ワオ!足音を立てないようにするなんて珍しく小動物らしいことをするね」
と雲雀は振り返らず答える。
縁側に座っている姿は明らかにリラックスしてる状態で、流水の音がBGM代わりに耳に響く。
10年前から学ランを羽織って純和風を好んでいた彼らしいものだった。
格好はスーツのまま、戻ってからも色々していたのだろうか。
結局は大人と子供――体力・知識・経験から全てが違う。
「それより用事があったんじゃないの?」
「えっ?」
言われて気づいたが、そわそわしただけで用事があるわけではない。
(「何もないけど訪ねました」なんて噛み殺されるだけじゃん!!)
「えっと、あの……」
言葉が詰まるので目を泳がせてどうしようか考える。
その姿を見て雲雀はなんとなく察したが、小言は言わなかった。
「無理には聞かないよ」
「はい……。それよりヒバリさん、煙草吸うんですね」
左手に握られた煙草と縁側に置かれた灰皿。
10年前の雲雀は未成でこんな姿を見かけないのが当然なのだが。
成人男性特有の色気を感じさせる長い指、煙草の灰を落とす度に鼓動を早くさせた。
「ああ、たまにね」
それ以上は答えず、会話は続かない。
「獄寺隼人なら十年後の君がボンゴレを継いだ時に煙草は止めたよ」
「そうなんですね……じゃあ守護者で吸ってるのってヒバリさんだけ?」
「さぁね……。ねぇ綱吉、キスしてよ」
不意な発言に返答ができない。
「聞こえなかった?君からのキスが欲しい」
「えっ?あの……ヒバリさん?」
10年前の雲雀とは既に付き合っているし、キスも数えられないほどして身体を何度も重ね合わせた仲だ。
相手が成長したのがこれほど緊張させるとは思ってもみなかった。
「早く」
急かす雲雀は鋭い瞳で綱吉を見つめるだけ。
この状況がずっと続くのも辛いものがある、意を決して顔を近づける。
「~~……」
赤くなった頬を見られたくないのでそっと唇を重ね合わせるだけのキス。
急いで離れようとすれば腰は左手で固定されていることに気づいた時にはもう遅い。
「……んん……」
キスはドンドン深いものへ変わる。
綱吉が離れたくてもそれは雲雀は許さない。
「ヒバリさ……」
唇と舌が解放されれば糸を引き、それが羞恥心を膨らませる。
「煙草はね、綱吉とキスができないと思うと口寂しくてね。それともこれからはずっと君がキスしてくれるの?」
酷く切なそうに微笑む雲雀を見て、綱吉は俯きながら唇を噛んだ。
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