身体を震わせるだけでお互いに何も言わない。
「ルルーシュ兄さん…」
名前を呼ぶと少し後ずさるが、少し前髪が浮くことでルルーシュの瞳に涙が溜まっているのがわかる。
「ロロ…お前がシャーリーを殺した、のか……?」
「そうだよ、僕が殺した」
返答を聞いてプツリと糸が切れたようにルルーシュは座り込むが、ロロは至って平然としていた。
涙を浮かべることもなく、表情が歪むこともない。
「なんで殺したんだっ!!」
“生きろ”と何度もギアスをかけても流れる血は止まらず青白くなっていく肌をただ見ているしか出来ない自分。
それを思い出すと嘔吐もしたし、その姿はロロも何度も見ている。
「なんでって、兄さんは僕だけのものだからだよ?僕以外に愛してるだなんて言われる必要はないじゃない」
馬鹿げてる……手に持っていた銃をロロに向けると少し相手は切なそうな表情かおに変わる。
自分から大事な友を奪っていった弟を好きで家族以上に愛していたというのか?
その事実さえも今は否定したかった。
「貴方に撃たれて死ぬなら、僕はそれさえも幸せだと思うよ」
「そんなことが幸せだと思うか!」
大きな発砲音がするとロロの頬から鮮やかな血が流れ、首を伝って服へと滲みこむ。
「……兄さんは僕を殺すのを戸惑ってる、なら――」
ロロは懐から身に着けている護衛用の銃を取り出すと自らの頭に向ける。
指に力が篭ったのをルルーシュはすぐに解った。
「馬鹿!死ぬな……!」
咄嗟に出てしまった声にルルーシュは思わず口を紡ぐ。
だがギアスの絶対遵守の力は武器を手放し、地面へと落ちた。
数秒してロロは銃が手元にないことに気づくと不思議そうにルルーシュに目線を移す。
「ギアスを使ったの?」
愛する兄に近づくが何も答えることはなく、何の素振りも見せない。
「兄さん?」
「何故死のうとする?何故シャーリーを殺した?……どうしてオレから大事なものを奪っていくんだ!」
大事な人を殺した弟という恋人が殺したい程に憎かった
でももう大事な人を失うのは嫌だった
それが仇でも自分の手の平から何かがなくなるのは嫌だった
「僕は兄さんが“今までなかった未来”に辿りつければ嬉しいと思ってた。
でもこの気持ちを抱えたまま、兄さんに殺されることも今までなかった未来だと感じてた。
兄さんが……僕以外の誰かを見て欲しくない。僕だけ……」
自分と同じように涙を流すロロを兄として恋人として頭を撫でる。
抱きしめれば相手も同じように自分の胸に閉じ込めようと抱き返す。
(オレのことでこんなに心の中で葛藤してたんだな……)
「お前以外を恋愛対象として相手にすると思ってるのか?」
そっと触れるだけのキスをロロに送ると、途端に涙は止まる。
お互いの腫れた瞼に触れれば、先ほどまでの感情は吹き飛ぶ。