02 Prevented Prince and Knight

ロロとジノの気遣いからか、毎日が何事もなく過ぎていった。
今日はミレイ会長の卒業イベントだがスザクは総督補佐業務の関係で来れないらしい。
あのナナリーの電話を思い出すと頭を抱えるが、青いハート型の帽子を被りイベント開始の合図を待った。

ミレイの突然の宣言から生徒から逃げるように地下にある司令室に潜ると咲世子と変わり直ぐに指示を出す。
少し行動には問題有りだが、咲世子の身体能力なら帽子を取られることもないだろう。
近くには保険としてロロも待機させているので安心だ。
このイベントが終わった後に全校生徒にどう言い訳をするかに頭を悩ませる。

「咲世子、交代する」
すぐにエレベーターで地上に戻ると咲世子が上がってきたエレベーターに入れ違いに入る。
少し不安そうな目で見るが大丈夫と答え、ドアが閉まる寸前でルルーシュ振り返ると「良くやった咲世子、休んでいろ」と告げた。
ほんの少しだけ咲世子がエレベーターの中でお辞儀をしたのが見える。
天然でSP体術を身に着けているとはいえ純粋に仕える気持ちは嬉しい。

「こんな所にいらっしゃったんですね、ルルーシュ様」
「!!――ジノか」
先ほどまで睨みつけていたモニターには学校内で複数の女生徒に追われていたジノが居た。
「追いかけっこは良いのか?」
少し苦笑いをしながらジノは言う。
「いいんですよ、私はルルーシュ様以外の人とずっと一緒に居たいとは思えませんから」
ルルーシュは少し皮肉を言ったつもりが、とんでもない言葉で返され咄嗟に近くの窓から外を見る。
横目でジノをチラリと見れば優しい笑顔でこちらを見ているのであわせる顔がない。
その瞬間に突然外が黒くなったと思い再び窓へと視線を戻す。
まじまじとよく見ればアーニャの搭乗機であるモルドレッドが覗き込んでいるではないか。

「わ……!」
「殿下!!」
次の瞬間には視界には床と瓦礫でルルーシュはパニックに陥るだけだった。
ジノが押し倒す形で2人は図書室の一角にある階段下に転がるが、直後――ドォン!

激しい揺れを感じ、建物全体に騒音が響く。
一番下まで落ちるとジノがルルーシュを気遣うように抱きしめる。
「大丈夫ですか!?」
「あぁ……」
ルルーシュは見上げるとモルドレッドが図書館に腕を突っ込んでいるのが見えて真っ青になるしかなかった。

ヴィレッタが静止に入ったことでアーニャは引いたようだが、外ではまだ騒ぎが続いている。
ジノはルルーシュが怪我をしていないことが解ると胸を撫で下ろす、が、疲れきっているのが伺えた。
あの場に自分が来なかったら助けることは出来なかったが、逆に居なければルルーシュはすぐにその場を去っただろう。
その1つの行動の矛盾が胸をチクリと突く。

(何とか元気付けてあげたい……)
声と共に急に頭が軽くなる。
「ルルーシュ様、頂きます!!」
数秒後。また頭に重さが戻る。
「ジノ!?何をした?!」
焦っているルルーシュとは違い、ジノは手に持っている青色の帽子を嬉しそうに被った。
「帽子を交換させて頂きました。これで公認ですね」
そして深く頭を下げ、その瞬間にルルーシュは帽子を奪い返そうとしたがジノはそれをかわす。
「ルルーシュ様とはいえどお返し出来ません。申し訳ありません」
仕方なくルルーシュは今にもずれ落ちそうなジノの帽子を整えて頭に乗せる。

「殿下?」
「男同士なら色も問題ないから交換してやる……」

優しく微笑む彼は舞い降りた黄金の天使のようだった。